2008-01-01から1年間の記事一覧

『魔法遣いに大切なこと』

まず何といっても物語の着眼点が面白い。魔法といわれて最初に想像するような不可思議な能力ではなく、どちらかといえば超能力といったほうがしっくりくる。だれでも魔法を遣えるわけではなく、遺伝により継承され、国家に管理されるという設定が良い。もち…

『ワールド・オブ・ライズ』

何も特筆すべきことのない、よくある「ハリウッド・メジャースタジオ映画」。ズバ抜けて面白いところもないが、顔をしかめるほどにヒドくもない。 まあ、リドリー・スコット作品なので安心して観れるし、主演の二人もブレない役者なので、ヘタな冒険をしてよ…

『ブロークン・イングリッシュ』

ジョン・カサヴェテスの娘、ゾエ・カサヴェテスの長編初監督作品とのこと。10年くらい前に彼女の監督作品としてDVDが発売されていたと記憶しているが、短編か何かだったのだろうか。未見なので詳細は分からない。父親の名前が冠として付くことから逃れられな…

『ウォーリー』

素直に楽しめたし、面白かった。本作品の主軸はウォーリーとイヴのラブ(という感情があるのか分からないが)・ストーリー。 作品自体はファンタジーだし、またSFでもあり、環境問題なども含まれているのだが、この際その辺の周辺事情は二の次というくらい、…

『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』

何がどうと言うより、とにかくカコイイ。 ドキュメントという名の物語はなく、基本的にライブ映画。ところどころに挿入される過去のインタービュー映像はあるが、バンド史やメンバー個人に対する言及はなく、「いつまでバンドは続くのか」といった愚問が並ぶ…

『ブラインドネス』

個人的には面白かったのだが、鑑賞後の明快な感想が見つからない。この監督、フェルナンド・メイレレスの作品はいつも感想に困る。 本作品にも当てはまることだが、彼の作品は善悪の境界が非常に曖昧であり、現代文明社会の中では非人道的とされる行為が、環…

『櫻の園−さくらのその−』

1990年に製作された前作「櫻の園」の監督、プロデューサー、主要技術スタッフが集まって作られた、続編でもリメイクでもない新しい「櫻の園−さくらのその−」。 映画として普通に面白かったが、前作があまりにも傑作であるだけに、本作品としては辛いところだ…

『彼が二度愛したS』

つまらなくはないのだけれど、正直、面白くもない、普通のサスペンス映画。ヒュー・ジャックマンが脚本に惚れ込み、自身の設立した製作会社の第一回作品として製作された作品とのことだが、彼がこの作品の何にそれ程まで惚れ込んだのか、理解に苦しむ。 電話…

『僕らのミライへ逆回転』

コメディ映画は個人的にあまり楽しめないため、観ないのだが、本作品は「映画」に対する愛情であふれていて、非常に楽しかった。映画をハンドメイドでリメイクするという発想がふざけていて良い。過去に学生映画などで既存映画のパロディ作品に関わったこと…

『フレフレ少女』

分かりきったことではあるが、新垣結衣のための作品。この一言に尽きる。 落ちこぼれ主人公たちが成長していくお定まりの青春映画なのだが、万事が万事、中途半端になってしまっている。監督である渡辺謙作の過去の作品は未見だが、これまでは自身で脚本を書…

『トウキョウソナタ』

監督、黒沢清による初めての本格的な家族ドラマとのこと。 家族四人、一緒に暮らしているが、お互いに違う方向を見ており、事務的な会話を重ねるだけで交流はない。そして、それぞれが家族に言えない秘密を抱えている。観る人によって感情移入できる登場人物…

「アキレスと亀」

宣伝で謳われているような「穏やかな感動」はしなかったし、涙も頬を伝わらなかった。だからとて、嫌いな作品でもない。北野武作品特有の編集リズムも気持ちよいし、くだらないギャグもそれなりに楽しい。 売れない画家である主人公と、彼に寄り添い支えつづ…

『落下の王国』

「ザ・セル」のターセム監督最新作とのことだが、監督自身が自宅以外の全てを売って製作資金に充てた、撮影期間4年、13の世界遺産を含む世界24カ国以上で撮影したという、壮大すぎる自主制作映画。 前作「ザ・セル」とは変わって、CGIに頼らないロケーション…

『イントゥ・ザ・ワイルド』

ショーン・ペン監督の長編4作目となる本作だが、今までの作品とは少し雰囲気が違う作品となっている。これまでの作品のような張りつめた緊張感はなく、よい意味で落ち着いた作品。 簡単にいってしまえば、「自分探し」に出た青年が、放浪の果てに、アラスカ…

『この自由な世界で』

労働階級・失業者・移民(不法入国)など、一貫して弱者の視点から描いた作品を重ねてきたケン・ローチ。前作「麦の穂をゆらす風」の歴史大作から一転した本作も、移民への職業紹介業を題材にした作品。 ただ、これまでの作品と違うのは、主人公が非常に能動…

『ダークナイト』

ジョーカーを演じたヒース・レジャーの撮影後の急逝も後押しして、何かと話題の本作。クリストファー・ノーラン版バットマンの2作目となるが、タイトルに「バットマン」という表記がないことが、潔い。充分にエンタテイメントではあるけれど、152分と長尺な…

『崖の上のポニョ』

宮崎駿監督作品としては、この10余年、「もののけ姫」以降で一番好きな作品となった。 「もののけ姫」以降の作品は、それなりに期待をして観るのだが、いまいち好きになれずにいた。心惹かれる設定や描写などはあるのだが、個人的に観たい物語に発展しないの…

『たみおのしあわせ』

愛しきダメ親子の物語。というと少々極端ではあるが、バリバリ仕事をこなすような世間的にわかりやすい成功者でもない、普通の、でもちょっと頼りない父子。 岩松了の書く物語はそんなダメ男が主人公であることが多い。しかし規模の大きな芝居や映像作品では…

『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』

全編フルリニューアルされた「攻殻機動隊」、リメイクではなくバージョンアップとのこと。サウンド(セリフ・音楽・効果音)はすべて採録し差し替え、アナログ4chからデジタル6.1chへ。映像は3DCGによる加筆、ところにより差し替えられている。当然のことな…

『告発のとき』

邦題も原題もそれぞれ違う意味でつかみどころのないタイトルを掲げている作品だが、物語は、観客の心臓をわしづかみするような、非常に胸の苦しくなる作品。 戦地から帰還した直後に軍から失踪し、後日焼死体で発見された息子。事件を調べる退役軍人の父親。…

『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』

自室の棚にパッケージされたソフトとして所有し、数年に一度、ふとした時に観直したい、そんな作品。 この作品の登場人物は悪人ではないが聖人君子でもない。そんな普通の、でも共に伴侶がアルツハイマーを患っている二組の夫婦のものがたり。とはいえ、多く…

「ミスト」

原作とは違うエンディングとのことで本国では賛否が二分しているようだが、個人的な「好き・嫌い」でいえば「好き」な作品。但し、細部の確認としてもう一回は観たいと思うが、三度は観ないだろうと思うほど非常に疲れる作品でもある。 基本的にモンスター映…

『ノーカントリー』

久し振りに「コーエン兄弟」な作品。でもコーエン兄弟にとって初の「原作もの」とのこと。 偶然に麻薬がらみの大金を盗んだ男と、それを追う殺し屋。そして二人を追う保安官。そんな昔気質の保安官によるナレーションで始まり、増加する凶悪で理解不能な犯罪…

『ジェリーフィッシュ』

あまり鑑賞機会のないイスラエル映画だが、プレスによると年間の長編映画製作本数は12〜18本で、この数年で海外に輸出されている作品のほとんどはフランス合作とのこと。そのせいか、一般的なイスラエルという国の印象からは想像できない、非常にやさしい映…

『スルース』

本作最大の魅力は、何と言っても、前作(35年前)で若い男を演じたマイケル・ケインが、本作で初老の推理作家を演じていることであり、ただそれだけでゾクゾクする。昨今よくみかける「ベテラン俳優が実子と共演しました」的な茶番とは全く違う、「作品」と…

『007 慰めの報酬』

一本の作品としては面白かったのだが、別に「007」シリーズでなくても良いんじゃないかと思う。これは前作「カジノ・ロワイヤル」の時も同じことを思った。 それ以前の「007」シリーズにあるような、非現実的な小道具や、ジェームズ・ボンドの常人離れしたキ…

『シルク』

作品のスミからスミまで、その全てが文芸大作な映画。 ただ残念なのは、フランスと日本のシーンで画づくりにあまり差異を感じなかったため、やや単調な印象を受けてしまった。確かにフランスでは春夏を中心とした色彩豊かな映像を重ね、日本では雪深い山間の…

『人のセックスを笑うな』

タイトルが持つインパクトとは全く別の、(良い意味で)普通の映画。役者の佇まいがナチュラルで良い。 必要以上のカット割りやアップもなく、過剰なセリフもない。非常にストイックで静かに物語が進んでいくため、近頃の映画を見慣れていると、やや長くも感じ…

『ジェシー・ジェームズの暗殺』

正直なところ、アメリカ時代劇(西部開拓や南北戦争など)に特別な思い入れもなく、もちろんアメリカで生まれ育ったわけでもないので、ジェシー・ジェームズやロバート・フォードに関する知識もないし、アメリカ国民にとって彼らがどのような存在なのかも知らな…

『アース』

太陽の光と地球の地軸の傾きによる季節変化の恵みを受けて生きる、地球上の生物たちの生態を紹介しながら、北極から南極へ旅していく構成が面白い。非常に貴重な映像もあるようだが、この手のドキュメンタリーをあまり観ないので、そこはあまり分からない。…