『ダークナイト』

 ジョーカーを演じたヒース・レジャーの撮影後の急逝も後押しして、何かと話題の本作。クリストファー・ノーランバットマンの2作目となるが、タイトルに「バットマン」という表記がないことが、潔い。充分にエンタテイメントではあるけれど、152分と長尺な上、重いテーマを内包しており、鑑賞後の爽快感を求めて、陽気なデートで観に行くのであれば、お勧めできない。
 正直、前作はあまり好きではなかったのだが、本作は非常に好きな作品となった。アクション映画としても楽しめるし、IMAXカメラの(部分)導入など冒険的な撮影を敢行しており、興味深い。
 が、なんと言っても物語が面白い。街にバットマンが存在するが故に起こる犯罪があり。その象徴として現れ、目的のない犯行を愉しみとするジョーカー。合法的に犯罪を一掃しようとする正義漢の地方検事であり、ブルース・ウェインの幼なじみレイチェルの恋人でもあるハービー・デント。ブルースは正義の象徴を、闇の存在であるバットマンから表世界のデントヘシフトさせようと、バットマン、デント、ゴードン警部補で三者協定を結ぶ。しかし、秩序を持たないジョーカーの畳みかける攻勢は、バットマンの信念で抑えた感情を揺さぶり、大衆の正義の象徴となったデントの正義感を崩して、復讐に燃える悪へ堕としていく。白黒を裏返そうとするジョーカーと、それぞれのモラルを持って、白黒二極化できないグレーゾーンを苦悩しながら進むバットマンとその周囲の人々という構図に興奮をおぼえる。

8月9日 公開
原題「THE DARK KNIGHT」
監督:クリストファー・ノーラン
出演:クリスチャン・ベール/マイケル・ケイン/ヒース・レジャー/ゲイリー・オールドマン/アーロン・エッカート/マギー・ギレンホール/モーガン・フリーマン

【ストーリー】
ゴッサム・シティーに、究極の悪が舞い降りた。ジョーカー(ヒース・レジャー)と名乗り、犯罪こそが最高のジョークだと不適に笑うその男は、今日も銀行強盗の一味に紛れ込み、彼らを皆殺しにして、大金を奪った。
この街を守るのは、バットマンクリスチャン・ベール)。彼はジム・ゴードン警部補(ゲイリー・オールドマン)と協力して、マフィアのマネー・ロンダリング銀行の摘発に成功する。
 それでも、日に日に悪にまみれていく街に、一人の救世主が現れる。新任の地方検事ハービー・デント(アーロン・エッカート)だ。正義感に溢れるデントはバットマンを支持し、徹底的な犯罪撲滅を誓う。
 資金を絶たれて悩むマフィアのボスたちの会合の席に、ジョーカーが現れる。「オレが、バットマンを殺す」。条件は、マフィアの全資産の半分。しかし、ジョーカーの真の目的は、金ではなかった。ムカつく正義とやらを叩き潰し、高潔な人間を堕落させ、世界が破滅していく様を特等席で楽しみたいのだ。
 遂に始まった、ジョーカーが仕掛ける生き残りゲーム。開幕の合図は、警視総監の暗殺だ。正体を明かさなければ市民を殺すとバットマンを脅迫し、デントと検事補レイチェル(マギー・ギレンホール)を次のターゲットに選ぶジョーカー。しかし、それは彼が用意した悪のフルコースの、ほんの始まりに過ぎなかった…。

配給:ワーナー・ブラザース映画
2008年/アメリカ/152分
(C) TM & (C) DC Comics (C)2008 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

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