『ウォーリー』

素直に楽しめたし、面白かった。本作品の主軸はウォーリーとイヴのラブ(という感情があるのか分からないが)・ストーリー。
作品自体はファンタジーだし、またSFでもあり、環境問題なども含まれているのだが、この際その辺の周辺事情は二の次というくらい、ウォーリーとイヴの物語になっている。物語を紡ぐ際にゆるがない主軸があることの力強さが、観ていて心地よい。同じく今夏発表された宮崎駿監督作品「崖の上のポニョ」を思い出すが、本作品はハリウッド大作だけあって、「崖の上のポニョ」ほど周辺事情を切り捨てず、作品全体もきちんとまとめている。
ウォーリーもイヴもコミュニケーション手段としての言語を持っていないため、物語の進行上どうしても必要ないくつかの単語以外にセリフがない。彼らの感情の変化は、たがいに名前を呼び合う声の抑揚と、表情や仕草という記号、そして編集と音楽を含む音で表現されている。周囲の設定や状況は人間や宇宙船の保守コンピュータにより最低限の説明はされているものの、作品全体でのセリフ量は極端に少ない。それでもこれだけの感情をきちんと表現できていることに感心する。
そして同時に、セリフに頼らない感情表現こそがサイレント時代から続く映画の本質なのだろうと、改めて思う。絶え間なくムダにしゃべり続けるキャラクターもなく、主人公の内面を丁寧に説明してくれる歌もないディズニー映画。ピクサー作品の最高傑作と言って良いだろう。


12月5日 公開
原題「WALL・E」
監督:アンドリュー・スタントン
出演:ベン・バート/エリッサ・ナイト/ジェフ・ガーリン/フレッド・ウィラード/シガニー・ウィーバー

【ストーリー】
人間たちが見捨てた、29世紀の地球。そこに、700年もの間、ひとりぼっちで働き続けるゴミ処理ロボットがいた。名前は“ウォーリー”。長い年月の中で、いつしか“感情”が芽生えた彼は、ゴミの中から“自分のお気に入り”を拾ってコレクションしていた。人間たちが残した“思い出”に囲まれていると、ウォーリーはちょっとだけ幸せだった。それが、彼の本当の孤独を癒すことはできないとしても・・・。
ある日、ウォーリーの前に現れた、ピカピカのロボット“イヴ”。ウォーリーは、彼女の気を惹くために、次々と自分の宝物を見せる。しかし、薄汚れた長靴に入った“ヒョロっとした植物”を見せた瞬間、イヴは突然フリーズしてしまう。彼女には、地球の運命を左右する“重大な秘密”が隠されていたのだ−。
宇宙船にさらわれたイヴを救うために、ウォーリーは未知なる宇宙へと旅立つ。それは、想像もつかないほど壮大な冒険の始まりだった・・・。

配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン
2008年/アメリカ/98分/シネマスコープ・サイズ/ドルビーSRD-EX
(C)2008 WALT DISNEY PICTURES / PIXAR ANIMATION STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

ウォーリー [Blu-ray]

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