『ほとりの朔子』(TIFF/P&I上映)

第26回東京国際映画祭コンペティション部門これまた誰もが思い起こすであろうエリック・ロメール的手法で語られる晩夏の物語。これもまた素晴らしかった。登場人物からは直接セリフとして語られぬ物語がストーリーの水面下で緊張を保ちながら紡がれてゆく。…

『ザ・ダブル/分身』(TIFF/P&I上映)

第26回東京国際映画祭コンペティション部門楽しかった。カフカ的不条理劇を、おそらく誰もが思い出すだろう『未来世紀ブラジル』とカウリスマキ作品なテイストで語る英国映画。さらには、そこにアジア歌謡曲が流れる。かなり好きです。 原題:The Double 監…

『ウィ・アー・ザ・ベスト!』(TIFF/P&I上映)

第26回東京国際映画祭 コンペティション部門たぁのしかった!映画祭サイトには“北欧版けいおん! But パンクス!”なんてよく分からない惹句が付いているけれど、ちゃんと意図をもった手持ち撮影が少女たちの感情を丁寧に紡いでいて、観客でいることが本当に…

『リゴル・モルティス/死後硬直』(TIFF/P&I上映)

第26回東京国際映画祭 アジアの未来 オープニング作品なんとキョンシー映画!悪い意味ではなく普通に面白かったです。このジャンルには大雑把なイメージしかないけれど、嫌いではありません。モンスターであれ死霊であれゾンビであれ、愛と憎しみの哀歌は好…

『高雄ダンサー』(TIFF/P&I上映)

第26回東京国際映画祭 ワールド・フォーカス 台湾電影ルネッサンス2013感想はとくになし。幾多とあるような“自主”映画でした。いや、今どきの自主映画の方がよほど面白いです。それでもうまく琴線に触れることがあれば感じる何かがあるのかもしれません。す…

『潔く柔く きよくやわく』(TIFF/P&l上映)

【覚書として】 原作マンガは未読だが人気があることは知っていた。コミックスで13巻とそれなりに長い物語を“どうにか”して“やっと”まとめました、という印象。まるで1クールのテレビドラマの総集編みたい。少女マンガを原作にした映画のほとんどは、どうし…

『エリジウム』

【覚書として】 『第9地区』での衝撃的な長編デビューに続く2作目にしてビッグバジェット作品という。大味なところもあるけれど、これは面白かった、大満足。テーマに目新しいこともなく、ストーリーテリングも決して巧いとは言えない。それでもこの作品に魅…

『スター・トレック イントゥ・ダークネス』

J.J.エイブラムスによるリブート版スター・トレックの第2弾。ノンストップと言ってよいだろう物語展開の連続が楽しく、良い意味で“普通に”面白かった。 前置き。これまで「スター・トレック」シリーズは意図的に避けていた。劇場版もテレビシリーズも作品数…

『タイピスト!』

1950年代末のフランスを舞台にしたロマコメの上に「目標!タイプライター早打ち選手権優勝」なスポ根要素をコミカルに乗算して描く。これがなかなか楽しい作品。なによりもまず、作品全体をいろどる50'sな色彩にあふれた美術や衣装、小道具が画面を埋めてい…

『風立ちぬ』

結論から先に書くならば、好きな作品ではある。でも咀嚼できていないので、機会をみてもう一度観たいと思っている。これまで公開前のレビューや公開後のさまざまな感想や批評をざっと斜めに読んではいたが、なるほど賛否どちらの意見にも納得はできる。ただ…

『モンスターズ・ユニバーシティ』

『モンスターズ・インク』の劇場用長編2作目は昨今流行りの前日譚で、主人公たちの大学生活を描く。しかも物語はサリーではなくマイクを中心にして展開してゆく。これがなかなかビターな物語になっていて驚く。“こわがらせ屋”になることを夢見るマイクは、勉…

『そして父になる』(9/28公開)

ここ数年の是枝裕和作品はどれも好きだが、この作品は別格か。設定と同じ年の子供がいることも物語への思い入れを深める。役者陣も良いし、スチル出身のCMカメラマンによる撮影も好みだった。公開されたらもう一度観る。 http://soshitechichininaru.gaga.ne…

『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(8/23公開)

面倒くさそうでシリーズは観たことがなく、リブートされた前作のみ鑑賞して観た今作。楽しかった。きっとシリーズのファンにはいろいろと感極まるところもあると思われる。腑に落ちないところもあるけれど、娯楽作として良し。 http://www.startrek-movie.jp…

『SHORT PEACE』

大友克洋の新作短編『火要鎮(ひのようじん)』が最大の注目となる“日本”をテーマに据えたオムニバス作品。どれも楽しかったが、白眉はやはり『火要鎮』か。絵巻物のイメージによる疑似ワンカットな冒頭に「またこういう手法なのか」と、ややテンションの下が…

『アンコール!!』

まあどうしても『glee』を思い出さずにはいられない“ロックやポップスを歌う合唱もの”ということになるのだが、その実この作品で描かれているのは、本人が思っている以上に存在の大きかった妻を亡くした男の“愛のかたち”の物語。その意味では合唱でなくても…

『タイピスト!』(8/17公開)

50'sの鮮やかな色彩であふれる衣装、美術、小道具が満載で見ているだけでも楽しいロマコメ。の上に「タイプライター早打ち選手権への道」がコミカルなスポ根テイストで乗算される。音楽も良かったしオープニング・タイトルバックも良し。楽しかった。 http:/…

『SHORT PEACE』(7/20公開)

大友克洋『火要鎮』を含むオムニバス作品。今更ながら、でも改めて、アニメーションの作品世界の具現化においてCGが広げてみせた振り幅の大きさに感嘆する。どれも面白かったが、白眉はやはり大友克洋作品か。『GAMBO』も好き。 http://shortpeace-movie.com…

『嘆きのピエタ』

キム・ギドクの劇映画としては5年ぶりとなる、2012年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受信作品。これが素晴らしかったのだけれど、そこはキム・ギドク作品、気軽に人に薦めることのできない、重い石を観客の心の中に残す作品だった。観ている間も絶え間なく感嘆…

『オブリビオン』

【覚書として】 まずは何より良い意味で正当なトム・クルーズ映画であったことに感嘆する。やはりこの人のセルフプロデュースの巧みさはスゴイと思う。“トム・クルーズ”というブランドの持つ影響力もイメージも客観的に把握しいて、それを上手に転がしている…

『アンコール!!』(6/28公開)

上映時間94分。いくらでも陳腐になりそうな物語から湿っぽいだけのエピソードをガッツリ抜いて、むしろ最近では少し新鮮な軽快さで語られる物語展開が楽しかった。 シニアコーラスのメンバーが舞台衣装として絞り染めTシャツを着ている。ウチの子が通う保育…

『はじまりのみち』

『クレヨンしんちゃん』シリーズなどの原恵一監督による初の実写長編作品は、木下恵介生誕100年記念映画。原恵一監督自身が熱烈な木下恵介作品のファンとのこと。戦中に映画を断念した木下恵介がふたたび“監督”に戻るまでの物語を病床の母との関係を中心に描…

『グランド・マスター』

ウォン・カーウァイ6年振りの新作はイップ・マンを題材としたカンフーもの。とは言えウォン・カーウァイ作品、ありきたりなカンフー映画になるはずもなく、映像の快楽に酔う123分。役者が数年をかけて習得したカンフーを、これでもかとハイスピード撮影を駆…

『建築学概論』

韓国で恋愛映画としては異例の大ヒットとなった“初恋”もの。まあ、なんともやりきれない感傷的な気持ちにしてくれる作品。とくにイイ歳を過ぎたオッサンの心には深く響くらしい。学生時代の過去と時を経た現在の二つの物語を平行して描いてゆくスタイルから…

『きっと、うまくいく』

近年のインド製エンターテインメント作品を紹介する「ボリウッド4」からの2009年ラージクマール・ヒラニ監督作品。これは面白い。170分という長尺もまったく気にならず、心の底から楽しんだ。何より脚本が良くできている。愛おしき“おバカ3人”の痛快大学生活…

『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』

デレク・シアンフランスが『ブルーバレンタイン』に続いてライアン・ゴズリングを主演に迎えた最新作は、二人の男とその子どもたちの15年に渡る3つの物語の交差を描く。根無し草のバイク乗りを演じるライアン・ゴズリングに加え、彼と対峙するエリート新米警…

『セレステ∞ジェシー』

4館という限定公開から全米586館へと拡大公開されたインディペンデント作品。主演のラシダ・ジョーンズとウィル・マコーマックの共同脚本は二人の実体験を基にしているそうで、スタッフやキャストの一部は彼女たちの友人や家族だという。乱暴な言い方ではあ…

『グランド・マスター』(5/31公開)

映像の快楽に酔う123分。静(実際には静ではないが)も動も、すべてのショットがケレンとロマンティシズムにあふれていて、その濃さに思わずムフッとニヤけてしまう。私は大満足だったが、嫌いな人も多そう。チャン・ツィイーが久し振りにステキ。 http://gran…

『ラストスタンド』

これは楽しかった。シュワルツェネッガー世代(なんて言葉がある?)ではあるけれど“復活作”という惹句には心躍らず。何よりもこの“やりすぎ”感を今のハリウッド映画に観られたことに過剰反応する。これぞ韓国映画監督のハリウッド進出の意義か。 公開中(4月27…

『ジャッキー・コーガン』

これは何でしょうね。やりたいことは分かるんだけれど、大事から小事までことごとく空回りしている印象。わざわざサラウンドでこれ見よがしに聴かせる周囲のわずかな話し声とか、耳障りでしかなかった。そういえば『ジェシー・ジェームズの暗殺』もあまり好…

『リンカーン』

教科書みたいとか真面目すぎるとか日本人には分からないとか、いろいろな評判を聞いていたけれど、なんだ面白いじゃないか。しっかりときちんと“映画”でもあったし。スピルバーグって若いころは嫌いだったけど、ある年齢を過ぎると突然好きになった。この作…