「ミスト」

 原作とは違うエンディングとのことで本国では賛否が二分しているようだが、個人的な「好き・嫌い」でいえば「好き」な作品。但し、細部の確認としてもう一回は観たいと思うが、三度は観ないだろうと思うほど非常に疲れる作品でもある。
 基本的にモンスター映画なのだが、原作者や監督が意図したとおり、外部との連絡が取れない孤立した状況で追い詰められていく集団劇として描かれている。この手の作品(映画に限らず)の多くが、ほぼ同じような展開をしていくため、細かな設定や語り方と物語の結末を除けば、さほど目新しい事はない。目の前の現実を受け入れ臨機応変に善処しようとする主人公。現実を受け入れず理論とマニュアルで行動し状況を悪化させる者。あわてて二次災害を招く者。事態の進展とともに周囲を思想的に扇動し一時的なカルト教団を作り上げる者。そうして分化された集団同士の対立・・・。
 面白いのは、カメラワークを決めずに二台のカメラで各々が撮りたい映像を撮るという撮影方法。その場にいる誰が撮られるか分からないという、いわば舞台劇のような濃密な空気を作り出しており、物語の緊張感を増幅させている。ある意味、非常に贅沢な撮影方法といえるだろう。
 あとは結末を受け入れることができるか、できないか、に全てがかかっているのだが、当然のことながら、ここでは書けない。

5月20日 公開
原題「The Mist」
監督・脚本・プロデューサー:フランク・ダラボン
出演:トーマス・ジェーン/マーシャ・ゲイ・ハーデン/ネイサン・ギャンブル/ローリー・ホールデン/アンドレ・ブラウアー/トビー・ジョーンズ/ウィリアム・サドラー/アレクサ・ダヴァロス

【ストーリー】
7月19日のその夜、メイン州西部の全域が、未曽有の激しい雷雨に見舞われた。嵐に脅える住民たち。だが、その後に襲ってきた正体不明の"霧"こそが、真の恐怖だったのだ。その霧は街を覆い尽くし、人々を閉じ込めていく。時を同じく、デヴィッドとビリーの父子は、食料の買出しに向かい、スーパーマーケットで霧に遭遇する。建物の外に出ようとした買い物客たちは、次々に"霧の中の何か"に襲われていった。店内に残され、閉じ込められた人々の間には、次第に恐怖が蔓延していき、迷信が理性を、極限状態が思考力を奪っていく。やがて恐怖は、"霧"だけでなく、良き隣人であったはずの"人間"同士の争いにまで及んでいく。そんな絶望的な状況の中、ある決意を固めて決死の脱出を図るデヴィッドとビリー。

ミスト [Blu-ray]

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