『ノーカントリー』

 久し振りに「コーエン兄弟」な作品。でもコーエン兄弟にとって初の「原作もの」とのこと。
 偶然に麻薬がらみの大金を盗んだ男と、それを追う殺し屋。そして二人を追う保安官。そんな昔気質の保安官によるナレーションで始まり、増加する凶悪で理解不能な犯罪社会への嘆きを主題に盛り込みながら進んでいく。原題「No Country For Old Man」にも、その主観の代表者が保安官であると分かる。
 が、そんな物語の主題や主演トミー・リー・ジョーンズの名前などを含む全てを、ハビエル・バルデム演じる殺し屋シガーの異様な存在感がかっさらっていく。ある意味、殺し屋シガーに始まってシガーに終わっていくのである。そんなシガーのダークで、ストイックすぎる故に滑稽なキャラクターが、非常にコーエン作品っぽく感じられる。(過度に暴力的ではあるが)
 本作のような、いわゆるノワール的要素の強い作品が発表される度に、「コーエン兄弟の最高傑作」と評されるが、優劣はともかく、コーエン兄弟+撮影:ロジャー・ディーキンスによる「ノワール的」作品は、やはりそれだけで興奮する。


3月15日 公開
原題「NO COUNTRY FOR OLD MEN」
監督・脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
出演:トミー・リー・ジョーンズ/ハビエル・バルデム/ジョシュ・ブローリン/ウッディ・ハレルソン
原作:コーマック・マッカーシー(「血と暴力の国」扶桑社刊)

【ストーリー】
 狩りをしていたルウェリン・モスは、偶然死体の山に囲まれたトラックと大量のヘロイン、200万ドルという大金を発見する。モスは自分の人生を大きく変えることを知りながらも、その金を奪ってしまう。この瞬間からモスの命は狙われることになる。
 消えた金を取り戻すために雇われた、コインの裏表で殺しを決める殺し屋アントン・シガーは、盗まれた金に取り付けられていた発信機と、ホースの先から圧縮した空気が飛び出すエアガンのような不気味な酸素ボンベを携え、モスの行方を追いはじめる。
 エド・トム・ベル保安官はモスが事件に巻き込まれたのではないかと考える。このままでは彼の命が危ないと思ったベルはモスの身柄を保護するため、そして殺し屋を捕らえるために彼らの行方を追う。

配給:パラマウント/ショウゲート
2007年/アメリカ/122分/35mm/カラー/シネマスコープ/DTS SRD SDDS
(C)2007 Paramount Vantage, A PARAMOUNT PICTURES company. All Rights Reserved.

ノーカントリー スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

ノーカントリー スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]