『007 慰めの報酬』

一本の作品としては面白かったのだが、別に「007」シリーズでなくても良いんじゃないかと思う。これは前作「カジノ・ロワイヤル」の時も同じことを思った。
それ以前の「007」シリーズにあるような、非現実的な小道具や、ジェームズ・ボンドの常人離れしたキャラクター設定など、その突飛さこそが「007」の醍醐味だと思っていたのだが、今シリーズのように「人間」ジェームズ・ボンドが登場し、現実的なスパイアクション映画を目指されると、何か違う気がする。個人的に「007」シリーズは数年に一度の「お祭り」のような感覚で楽しんでいたのに、シリアスな本格アクション映画なら、他にいくらでもある。
とはいえ、アクション映画としては面白いし、「007」として観なければ、充分に楽しめる作品でもある。また、人間ドラマとしても、ずいぶんと難しいことに挑戦している。大切な人を殺された私怨で復讐することで感情は慰められるのか、その結果、何を得ることができるのだろうか、と。
あと数本はダニエル・クレイグ主演のこの路線で製作されるだろうから仕方ないとしても、いつかはまた「お祭り」のような「007」の新作を観たいと、切に願ってます。


1月24日 公開
原題「QUANTUM OF SOLACE」
監督:マーク・フォスター
出演:ダニエル・クレイグ/オルガ・キュリレンコ/マチュー・アマルリック/ジュディ・デンチ

【ストーリー】
愛するヴェスパーを失い、失意のボンド。彼女の裏切りの真相追求のためMと共に尋問した男から、地球を揺るがす危険な組織の存在を知る。ハイチに飛んだボンドは謎の女カミーユを通して組織の幹部グリーンに接近、恐るべき計画を突き止める。彼らは貴重な天然資源を支配することにより、ある国の滅亡を企てていた。個人的感情が許されない007としての任務、愛する女を自殺に追いやった組織への復讐に揺れるボンド。同じく心に傷をもつカミーユはいつしかボンドに惹かれはじめていく−。

配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2008年/イギリス、アメリカ共同製作/106分/スコープサイズ/全6巻/2,907m/SDDS、ドルビーデジタル、ドリビーSR/字幕翻訳:戸田奈津子