『シルク』

 作品のスミからスミまで、その全てが文芸大作な映画。
 ただ残念なのは、フランスと日本のシーンで画づくりにあまり差異を感じなかったため、やや単調な印象を受けてしまった。確かにフランスでは春夏を中心とした色彩豊かな映像を重ね、日本では雪深い山間の村が舞台でほとんど色彩のない映像と、差別化はしているのだが、ライティング(特に室内)の影響だろうか、どうしても同じに見えてしまう。もちろん統一した画作りや作品の主旨として、あくまで綺麗に撮り上げることに依存はないのだが。
 美術や衣裳をはじめとした美しい映像。必要以上に煽ることのない、静かな、それでいてエモーショナルな音楽。この美しい物語は、ヒリヒリした現代において、ノスタルジィやファンタジィによる「癒し」や「逃避」ではない「潤い」を与えてくれる。


1月19日 公開
原題「SILK」
監督:フランソワ・ジラール
出演:マイケル・ピット/キーラ・ナイトレイ/アルフレッド・モリーナ/役所広司/芦名 星/中谷美紀/國村 隼 他
原作:アレッサンドロ・バリッコ
音楽:坂本龍一

【ストーリー】
19世紀、フランス。戦地から戻ったばかりの若き軍人エルヴェは、美しいエレーヌと出会い恋に落ち、やがて二人は結婚する。そんな矢先、村で蚕の疫病が発生し、エルヴェは、美しい絹糸を吐く蚕の卵を手に入れるため、海を渡り、砂漠を越え、遥か極東の国−日本へ。そこで彼は、もう一つの運命的な出会い−、絹のように美しい肌を持つ、少女で出会う。少女に魅せられたエルヴェは、命の危険も顧みず日本への旅を重ねていく。

配給:アスミック・エース
2007年/日本=カナダ=イタリア/109分/カラー/ヴィスタ/ドルビーデジタル
(C) 2006 Jacques-Yves Gucia/ Picturehouse Productions

シルク [DVD]

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