『ジェリーフィッシュ』

 あまり鑑賞機会のないイスラエル映画だが、プレスによると年間の長編映画製作本数は12〜18本で、この数年で海外に輸出されている作品のほとんどはフランス合作とのこと。そのせいか、一般的なイスラエルという国の印象からは想像できない、非常にやさしい映画。
 出演者のほとんどは、監督夫婦の友人・親族の映画監督や演劇人をはじめ、全く演技経験のない素人など多岐に渡っており、そのキャスティングが絶妙で、観ていて心地よい。
 3つの物語が所々で交差しながら進んでいくのだが、登場人物が皆、自身では解決のきっかけを作れずにいる「孤独」を抱えており、それぞれの物語に第三者がかかわることで、主人公たちは周囲との関係を修復していく。
 監督兼脚本のシーラ・ゲフェンの実体験に基づいているようだが、その製作過程や出演者との関係など、作品自体が非常に個人的であり、それ故に観る側へ強い感動を与える。やはり全ての芸術は、個人的であるべきだと再認識させられる。
 ふとした時に思い出し、見返したくなる、そんな作品。

3月15日 公開
原題「Medusot」
監督:エトガー・ケレット/シーラ・ゲフェン
出演:サラ・アドラー/ニコール・ライドマン/ノア・ノラー/ゲラ・サンドラー/マネニータ・デ・ラトーレ/ザリラ・ハリファイ

【ストーリー】
結婚式場で働くバティアは、海辺で不思議な女の子に出会う。体に浮輪をつけ、一言も話をしない女の子は、なぜかバティアの後をついてくる。警察にも迷子の届けではなく、バティアは週末だけこの子を預かることになる。花嫁のケレンはバティアが働く式場で披露宴の最中に足の骨を折ってしまい、新婚旅行を諦める。代わりに夫婦は海が見えるホテルに泊まるが、そこで花婿のマイケルは謎めいた女性に出会う。フィリピンから出稼ぎに来たジョイは一人暮らしの老女マルカのヘルパーとなる。気難しいマルカに戸惑いつつも、やがてジョイはマルカと長らく仲違いしている娘ガリアとの関係を修復していく事になる。寄せては返す人生の波に揺られ、流れのままに彷徨うしかない人々。それでも誰もが切ない思いを胸に抱えながら、かすかな希望の光を求めて“今”を生きてゆく−。

配給:シネカノン
2007年/イスラエル=フランス/82分/35mm/1:1.85/ドルビーSRD/カラー
(C)2007 - Les Films du Poisson / Lama Productions LTD / ARTE France Cinema

ジェリーフィッシュ [DVD]

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