『人のセックスを笑うな』

 タイトルが持つインパクトとは全く別の、(良い意味で)普通の映画。役者の佇まいがナチュラルで良い。
 必要以上のカット割りやアップもなく、過剰なセリフもない。非常にストイックで静かに物語が進んでいくため、近頃の映画を見慣れていると、やや長くも感じる。個人的には、あと10分短いと気持ちよいのではと思うが、こればかりは個人の主観と生理なので仕方ない。
 とても日本(もしくは西欧)的映画なのだが、今までの日本映画とも、この10年ほどで増えてきた多くの「女性監督作品」ともどこか違う。作品との距離感が絶妙で、かもしだす空気の肌触りが心地よい。
 女性作家による日本現代小説の雰囲気を非常に素直でうまく形にしている作品。女性作家小説が苦手な人にはツライかも。


1月19日 公開
監督:井口奈己
出演:永作博美/松山ケンイチ/蒼井 優/忍成修吾
原作:山崎ナオコーラ人のセックスを笑うな」(河出書房新社刊)

【ストーリー】
 19歳の美術学校生、みるめ。ある日、20歳年上のリトグラフ非常勤講師ユリに絵のモデルを頼まれ、アトリエを訪れる。考えもなく引き受けたみるめだったが、当たり前のように服を脱がされ、そのまま関係を持つ事に−。最近様子がおかしいと堂本に問いただされ、うれしそうにユリとの関係を告白するみるめ。そんな二人のはしゃぎぶりに、顔を曇らせるえんちゃん。
 初めての恋に有頂天のみるめだったが、実はユリは父親くらいの年配の男と結婚していた。思いもよらぬ現実に突き当たり、愕然とするみるめ。
 「みるめくんとは遊びですか?」と問いただすえんちゃんに、「みるめくんに触ってみたかったんだよね」「やってみなきゃ、いいか悪いかもわかんないよ」と、屈託なく答えるユリ。
 いくら電話しても電話に出ないみるめが心配になったえんちゃんは彼の家を訪ねる。あらためてみるめの想いを知り、やりきれなくなるえんちゃん。会いたければ会えばいいと、自分の気持ちに反して、彼の背中を押してしまう。

配給:東京テアトル
2007年/日本/137分/ビスタサイズ/DTS STEREO
(C)2008「人のセックスを笑うな」製作委員会

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