『櫻の園−さくらのその−』

1990年に製作された前作「櫻の園」の監督、プロデューサー、主要技術スタッフが集まって作られた、続編でもリメイクでもない新しい「櫻の園−さくらのその−」。
映画として普通に面白かったが、前作があまりにも傑作であるだけに、本作品としては辛いところだと思う。しかし、これだけ前作の主要スタッフが集まっている以上、前作と比較されることは避けられない。
物語上での前作とのつながりは一切なく、学校名と、創立記念式典で「桜の園」を上演していたという過去の伝統だけが残されている。とはいえ、女子校を舞台にしている以上、同姓に対する憧れや思慕が存在する。そこから生まれる人間関係は、本作品が前作とは違う物語であっても要所要所で前作とリンクしていく。また、本作品に登場する、取り壊しが決定し立入禁止になっている旧校舎内の元演劇部部室というのが、前作に登場する部室と似ていたり、あのオリジナル柔軟体操も登場して、前作のファンとしては楽しい。
それと同時に訪れる、何とも言えない、心臓をキュッとつかまれるような感情がある。あの古い部室を中心に、おそらく学校という空間だけが持っている独特の閉塞された世界と、時間と世代を重ねても、その都度キャストを変えながら、これまで幾度となく繰り返されてきたであろう彼女たちの物語。そんなことを想像してしまうのは、本作品が18年前の「櫻の園」の続編でもリメイクでもなく、それでも確実に前作の延長上に存在していることを感じさせるからであろう。


11月8日 公開
監督:中原俊
出演:福田沙紀/寺島咲/杏/大島優子/はねゆり/武井咲/大杉漣/富司純子

【ストーリー】
ヴァイオリニストになる夢を失った少女・結城桃が、姉がかつて通っていた名門私立女子高校「櫻華学園」へ編入してくる。伝統を重んじる音楽学校の方針とそりが合わず、新たな目標を求めてここに来たのだが、櫻華学園も伝統に囚われた学校だった。他人がどう思おうとも、自分が正しいと思ったことに妥協したくない桃は、転校初日から、早くも規則だらけの学校に違和感を覚える。
ある日、校舎内にあかずの部屋と言われる場所があることを知り、好奇心に駆られる桃。そこは廃部となった演劇部の部屋だった。そこで桃は、チェーホフの「桜の園」の台本を見つける。その後、かつてこの女子高では創立記念日に「桜の園」を上演することが毎年の伝統だったのが、ある事情から今はそれが途絶えていることを知る。
桃は再び「桜の園」の劇を復活させようと、同級生や仲間たちを誘い奔走するが・・・。

配給:松竹
2008年/日本/102分/カラー/ヴィスタサイズ/ドルビーSR
(C)2008「櫻の園」製作委員会

櫻の園-さくらのその-プレミアム・エディション [DVD]

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