『魔法遣いに大切なこと』

まず何といっても物語の着眼点が面白い。魔法といわれて最初に想像するような不可思議な能力ではなく、どちらかといえば超能力といったほうがしっくりくる。だれでも魔法を遣えるわけではなく、遺伝により継承され、国家に管理されるという設定が良い。もちろん、魔法を遣えるが故の苦悩もあり、また家族をはじめとする周囲の人々との関係にも影響していく。
元々は2000年の城戸賞を受賞した脚本があり、以後、漫画、テレビアニメ、小説の原作となり、続編漫画と小説も発表されている。そして本作品はこの世界観を踏襲して新たに書かれた物語とのこと。そのためか、物語としてはよくある青春難病ものになってしまっている。残念ながらこれまでの作品は未見なので、当初の作品がどのような物語だったのかは分からない。設定は面白いので、いくらでも物語は生まれそうだが、本作品の青春難病もの路線は、正直「ねらい過ぎ」に思える。それこそが本作品の主旨であろうことは分かるのだが、直球すぎて、ちょっと照れてしまう。
でも、そんなことがどうでもいいくらい、主演の二人が良い。もちろん演技は未熟だが、それを補うだけの品の良さがあって充分に魅力的だ。他のベテラン俳優たちもきちんと二人を支えていて、安心して観ることができる。ひとときの清涼剤として、オススメの一本。


12月20日 公開
監督:中原俊
出演:山下リオ/岡田将生/田中哲司/木野花/永作博美

【ストーリー】
日常に“魔法遣い”がいる現代。
手続きさえ取れば、誰でも魔法を依頼することができる。
16才の少女ソラは、人の役に立つ正式な魔法遣い“魔法士”になるため、北海道から上京。魔法士研修で出会ったのは、同じ夢を追う仲間や先輩魔法士、そして最初は反発しながらも惹かれあう、豪太。魔法を依頼する人たちの喜びや苦しみを受け止め、ソラは一人前の魔法士に成長していく。しかし、ソラには哀しい宿命が・・・。かけがえのない豪太との恋。最後に叶えたいソラの大切な約束とは・・・?

配給:日活
2008年/日本/100分/35mm/ビスタサイズ/DTSステレオ
(C)2008 山田典枝/「魔法遣いに大切なこと」製作委員会