『落下の王国』

 「ザ・セル」のターセム監督最新作とのことだが、監督自身が自宅以外の全てを売って製作資金に充てた、撮影期間4年、13の世界遺産を含む世界24カ国以上で撮影したという、壮大すぎる自主制作映画。
 前作「ザ・セル」とは変わって、CGIに頼らないロケーションによる映像は、ターセム監督独特の世界観と石岡瑛子の衣装により、これ以上ない絢爛な映像絵巻となっている。
 ただし、物語としては正直、面白くない。青年が少女に、その場しのぎで語り出した「ものがたり」が、やがて「二人のものがたり」として互いを希望に導いていくのだが、その語り口があまり上手くない。青年が語る「ものがたり」の進行と現実世界での二人の関係がシンクロしていく過程が強引で、「ものがたり」の映像美だけが強く印象に残る。その破綻ぶりは、テリー・ギリアムの「バロン」を思い出す。
 映像系の監督による「構想何十年」と謳われる自作物語は、何故こうもすべからく破綻するのだろうか。元来的にストーリーテラーではないから、ただの絢爛豪華映像絵巻となってしまうのだろうか。非常に残念でならない。


9月6日 公開
原題「THE FALL」
監督:ターセム
出演:リー・ペイス/カティンカ・アンタルー/ジャスティン・ワデル

【ストーリー】
時は1915年。映画の撮影中、橋から落ちて大怪我を負い、病院のベッドに横たわるスタントマンのロイは、追い打ちをかけるように、私生活でも恋人を主演俳優に奪われ、自暴自棄になっていた。そこに現れたのが、オレンジの樹から落ち、腕を骨折して入院していた5才の少女・アレクサンドリア。ロイは動けない自分に代わって、自殺するための薬を薬剤室から盗んで来させるべく、純真無垢な彼女を利用することを計画。アレクサンドリアの気を引こうと、思いつきの冒険物語を聞かせ始める。
それは6人の勇者が世界を駆け巡り、悪に立ち向かう【愛と復讐の叙事詩】−。
めくるめく物語に魅了され、話の続きをせがむアレクサンドリア。その一方で、希望を失ったままのロイは遂に・・・。

配給:ムービーアイ・エンタテイメント
2006年/アメリカ/118分/ビスタ/SR-SRD DTS SDDS
(C)2006 Goodly Films, LLC. All Rights Reserved.

ザ・フォール/落下の王国 [Blu-ray]

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