2012映画

『アーティスト』

1920年代後半から1930年代初頭、無声映画からトーキーへ移り変わってゆくハリウッドを舞台にした映画スター盛衰の物語にラブストーリーを重ねて描くメロドラマで、全編を白黒映像とセリフのないサイレント手法で紡いでゆくフランス映画。上映時間101分、その…

『ドライヴ』

ライアン・ゴズリング主演のクライム・サスペンス。まあ幾多とありげなクライムもので、特筆するような真新しい要素があるわけではない。この作品に全く感じ入ることができない人も確実にいると思うけれど、個人的には大ヒットでした。 役名もない寡黙で孤独…

『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』

1960年代のアメリカ南部ミシシッピを舞台にした黒人メイドの物語というだけで、ただ重い物語か安易な感動物語を想像してしまうけれど、さにあらず。軽やかな語り口にユーモアを織り交ぜながら紡がれる物語は群像劇の色合いが強く、146分という時間を感じさせ…

『カエル少年失踪殺人事件』

韓国三大未解決事件のひとつを『殺人の追憶』『あいつの声』に続いて映画化した作品。この時点でどうしても『殺人の追憶』と比較されてしまうのは少し可哀想ではある。 実話の映画化なわけだけど、特に物語後半において幾分の脚色もあるように思える。公式な…

『長ぐつをはいたネコ』

『シュレック』シリーズに登場した“長ぐつをはいたネコ”ことプスを主人公にしたスピンオフ作品。監督は『シュレック2』でプスを登場させたクリス・ミラー。 イギリスの語り伝え童話「ジャックと豆の木」をモチーフに、プスと幼なじみハンプティ・ダンプティ…

『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』

タイトル通りマーガレット・サッチャーの物語だが、サブタイトルである『鉄の女の涙』が示すように、この作品は偉人伝でもなければ社会派ドラマでもなく、サッチャーという一個人に焦点を当てて描いている。それは脚本家アビ・モーガンが語る「王となった人…

『SHAMEーシェイムー』

マイケル・ファスベンダーがセックス依存症のエリートサラリーマンを演じる衝撃作。生活のすべてをセックスで埋める主人公の日常が妹の訪問により狂いはじめる、その過程を長回しを多用した少ないカット割りで追ってゆく。この兄妹の過去に触れられることは…

『戦火の馬』

スティーブン・スピルバーグ最新作。マイケル・モーパーゴの同名小説の舞台化に感銘を受けたスピルバーグが映画化を熱望し、その7ヶ月後には撮影に入っていたという入魂の一作。これが素晴らしい作品だった。 馬(もちろん喋ったりしない)が主人公という少…

『ヒューゴの不思議な発明』

マーティン・スコセッシ初の3D作品。原作はブライアン・セルズニックによる同名児童小説。大きな見所が2つあり、まずは3D映像の素晴らしさ。『アバター』に始まる映画史上何度目かの3Dブームを確実に大きく一歩前進させており、『アバター』が提示した3D…

『ヤング≒アダルト』

『JUNO/ジュノ』の監督と脚本家のコンビによる最新作は、高校時代にクイーン(と思い込んでいる)だった女性が自己中のまま中途半端な成功に行き詰まり、妻子ある元カレとヨリを戻そうとする、とてもイタイ物語。主人公のズレた言動にどれだけ共感“してしま…

『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』

ヴィム・ヴェンダースによるピナ・バウシュに関する長編ドキュメンタリー。バレエもダンスも全く門外漢だし、ピナ・バウシュのことも名前しか知らなかったけれど、これがえらいこと面白かった。 そもそもヴィム・ヴェンダースがピナ・バウシュのドキュメンタ…

『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』

かなり好きな映画。スティーブン・ダルドリーは好きな監督。でも本国で賛否両論だったし日本公開してからも微妙な感想が目立っていたから、どんなものかと思っていたけど、予想をはるかに上回る映画だった。中盤以降、胸が締めつけられて苦しいこと、苦しい…

『メランコリア』

ラース・フォン・トリアー監督最新作。スゴイ映画でした。内に外に壮大な物語で、それでもやっぱり鬱映画でした。 前作『アンチクライスト』とは全く方向性の違う映画ですが、ザッツ“ラース・フォン・トリアー”な作品であり、最高傑作と言われても否定しませ…

『麒麟の翼 〜劇場版・新参者〜』

ドラマ版は未見。勤務先が人形町だった頃に何度か撮影現場に遭遇したコトを本編が始まってから思い出した程度に門外漢。演出や音楽の使い方に「?」な部分が多かったけど、思っていたより面白かった。古い友人がスタッフで参加していたコトに驚く。 1月28日 …

『ドラゴン・タトゥーの女』

スウェーデン発のベストセラーミステリー小説を本国で映画化した『ミレニアム』シリーズ第1作をデヴィッド・フィンチャーがリメイクした作品。ま、元々のストーリーが横溝正史ばりのよくある“お家騒動もの”なので、リスベット登場編である以上の何かがあるわ…

『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』

スプラッターホラーの体裁を取ったコメディ映画。“おバカ”な兄弟と彼らを殺人鬼と思い込んだ大学生グループとの珍騒動。誤解が誤解を生み、チャチな偶然が重なって次々に人が死んでゆく。血も肉もたくさん飛び散るけど、そこに凶悪な殺意がないので全く怖く…

『人生はビギナーズ』

『サム・サッカー』(2005)に続くマイク・ミルズの長編劇映画2作目(間に長編ドキュメンタリー作品『Dose Your Soul Have a Cloud?』(2007)がある)。この作品では母親の死後に75歳にしてゲイであることをカミングアウトした父親というマイク・ミルズ自身の体…

『ラバー』

ミスター・オワゾ名義のミュージシャンでもあるクエンティン・デュピューの長編デビュー作。作品冒頭で登場人物の一人が「この作品は“理由はない(No Reason)”ことへのオマージュである」と解説する。理由なく意思を持ったタイヤが次々に殺人を犯してゆくとい…

『テトロ 過去を殺した男』

フランシス・フォード・コッポラ監督最新作。と言っても2009年作品。しかも2月にDVD発売(BDは未発売)を控えての限定上映という不遇の作品。コッポラなのに。確かに万人向けな作品ではないし、アート系(という言葉はまだ生きてます?)の扱いで配給するに…

『ヒミズ』

ハイクオリティな作品をハイペースで発表し続ける園子温最新作にして初の原作もの。前2作のような爆走した作品ではないが、それ以上に観客の心をつかんで離さないパワーと希望をみせる。何より主演二人が素晴らしすぎる。物語の主要部分は原作にほぼ忠実だが…

『デビルズ・ダブル -ある影武者の物語-』

サダム・フセインの息子という立場に乗じてモラルなき私欲の限りを尽くしたウダイ。その影武者を強要された男の物語。脚本も良いが、何と言っても二役を演じたドミニク・クーパーが素晴らしい。この作品の面白さの9割は彼の功績と言っても過言ではあるまい。…