『人生はビギナーズ』

『サム・サッカー』(2005)に続くマイク・ミルズの長編劇映画2作目(間に長編ドキュメンタリー作品『Dose Your Soul Have a Cloud?』(2007)がある)。この作品では母親の死後に75歳にしてゲイであることをカミングアウトした父親というマイク・ミルズ自身の体験を起点として、その後に父親を癌で亡くした喪失感に包まれた主人公が一人の女生と出会うことで再生されてゆく、二つの物語が同時進行して描かれてゆく。
カミングアウトしたことで“やりたかったこと”に次々と飛び込んで世界を開いてゆく父ハルの姿は、フランス人女優アナと出会ったが今一歩自分の殻を壊せない主人公オリヴァーに、心を開いてゆくことを教える。
この作品は監督マイク・ミルズのとてもパーソナルな部分から発生した映画であるが、同時に自分の環境から一歩を踏み出すこと、特に人と親密に関わってゆくことに臆病で悩む人たちに、少しの勇気と背中を押す手助けをしてくれる。
この“少しの勇気”と“心の手助け”は映画に限らず娯楽作品や芸術作品の持つ最大の魅力であると改めて感じさせる、そんな普遍性を持つ作品になっている。
作品の題材そのものは決して軽いものではなく、どちらかと言えば重いテーマではあるが、マイク・ミルズによる幾つものポップな演出は作品の間口を広げている。この深刻なだけにならないユーモアの描き方が作品をとても親しみ易い傑作に仕上げている。
やはり何と言ってもクリストファー・プラマーが素晴らしい。そして主演のユアン・マクレガーも年を重ねるごとに“ただの格好良い人”ではない魅力を増してきて、画面を締める役者になってゆくようで嬉しい。


2月4日 公開
原題「BEGINNERS」
監督・脚本:マイク・ミルズ
出演:ユアン・マクレガー/クリストファー・プラマー/メラニー・ロラン/ゴラン・ヴィシュニック/カイ・レノックス/メアリー・ペイジ・ケラー/キーガン・ブース
撮影監督:カスパー・タスセン
プロダクション・デザイナー:シェーン・ヴァレンティノ
編集:オリヴィエ・ブッゲ・クエット
音楽:ロジャー・ネイル/デヴィッド・パーマー/ブライアン・レイツェル
音楽監修:ロビン・アーダン

【ストーリー】
38歳独身で奥手なオリバーは、母に先立たれ5年がたったある日、ガンの宣告を受けた父からゲイであることをカミングアウトされる。衝撃を受けたオリバーは事実をなかなか受け止められず臆病になってしまい、運命的な出会いを果たした女性アナとの関係も自ら終わらせてしまう。しかし、真実を告白した父は残された人生を謳歌し、その姿を見たオリバーは自分の気持ちに正直に生きることを学んでいく。

配給:ファントム・フィルム/クロックワークス
2010年/アメリカ/105分/ドルビーSR・SRD/ヴィスタサイズ
(C)2010 Beginners Movie, LLC. All Rights Reserved.

公式サイト http://www.jinsei-beginners.com/

ミニパラ http://www.minipara.com/movies2012-1st/jinsei/

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