2012映画

『ニュータウンの青春』

俳優でもある盛岡龍の初長編作品。公開当初から絶賛評は聞いていたけれど、なるほどこれは面白かった。観ているだけでも恥ずかしくも愛おしいバカ3人の物語が、いつまでも心に残る。勝手に15年くらい前を設定している物語かと思って観ていたが、もっと現代の…

2012年公開作品「私的」ベスト25

2012年に劇場公開された新作映画から洋邦混在の25選です。いろいろなところで言われていますが今年は豊作の年だったようで25本以下にできませんでした。第1位『この空の花ー長岡花火物語』 (2011年/日本/監督:大林宣彦) http://konosoranohana.jp/ この作品…

『もうひとりのシェイクスピア』

ローランド・エメリッヒの最新作は、これまでのキャリアからは想像できないコスチューム・プレイであり、しかもシェイクスピアもの。どうやら10年以上前からの念願の企画とのことで、“シェイクスピア別人説”の物語をVFXで再現した16世紀末ロンドンの街並みの…

『マリー・アントワネットに別れをつげて』

バスティーユ陥落によるフランス革命勃発から3日間のベルサイユを、マリー・アントワネットの朗読係の視点から描いた作品。ベルサイユ宮殿の入場禁止区域で撮影したことも話題。庶民の少女が王妃に仕えることで、王妃への憧れから敬愛を越えて偏愛にも似た愛…

『フランケンウィニー』

1984年、長編監督デビュー前のティム・バートンがディズニー在籍時に制作した30分の同名短編実写映画をオリジナル同様にモノクロのままストップモーション・アニメとしてセルフリメイク。基本ストーリーはそのままに、主人公のクラスメイトによるエピソード…

『ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館』

主演ダニエル・ラドクリフが『ハリー・ポッター』シリーズ終了後の出演作として選んだ、イギリス製ゴシック・ホラーで、1983年に刊行された小説「黒衣の女 ある亡霊の物語」の映画化作品。個人的にはずいぶんと久し振りに観たビックリドッキリなゴシック・ホ…

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

導入部がネタバレに抵触するという壮絶と悶絶の95分。個人的には楽しんだが、物語作品としてはやっぱり前作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』が好き。今シリーズが完結しても結局『〜破』が一番好きだったりするような気がしている。 今夏に特撮博物館で出品…

『その夜の侍』

容易な感想を許さぬ何とも言えぬ後味を残す作品。劇団THE SHAMPOO HATの戯曲を作演出である赤堀雅秋自身により映画用に改稿、彼の初監督作品となる。堺雅人、山田孝之、綾野剛、新井浩文の共演だけでも一筋縄ではいかないことは予想ができるが、これはその斜…

『シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語』

ジェームズ・キャメロン製作によるシルク・ドゥ・ソレイユの3D映画。複数公演の演目をつないで映画オリジナルの物語を紡いでゆく。個人的には彼らの公演を観たことはないため比較はできないが、3D映画としてはとても興味深い作品だった。先に公開されていた…

『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』

マドンナの劇場用長編二作目は、英国王エドワードとその妻ウォリスの物語を、現代(1998年)に生きる女性ウォリーを媒介にして描いてゆく。アメリカ公開時のあまりの不評ぶりにどんなものかと思っていたけれど、果たして思いのほか楽しんで観ることができた。 …

『JAPAN IN A DAY [ジャパン イン ア デイ]』

フジテレビの企画発案によるリドリー&トニー・スコット監督の『LIFE IN A DAY』の日本版。一般投稿による2012年3月11日に撮影された映像を紡いだ作品。いろいろ複雑な想いで観たし、正直、絶賛も否定も容易にできない。強いて言えば思っていたよりフラットな…

『アルゴ』

楽しみにしていた作品。いやぁ面白かった。金庫破りや強奪モノではないけれどこれも一種のケイパー映画。ラスト20分での一点突破を目指してプロたちが入念な準備を重ね、物語のディティールを積み上げてゆく過程が無類に面白い、昔ながらの映画の王道物語。…

『リンカーン/秘密の書』

小説『高慢と偏見とゾンビ』を書いたセス・グレアム=スミスの原作・脚本による、アメリカ大統領リンカーンはヴァンパイア・ハンターだった、という奇想怪奇アクション。もしくはアメリカによるアメリカ万歳映画。話のネタとしては面白いと思うけど、ほぼ全…

『シャドー・チェイサー』

2013年公開で新スーパーマン役を控えるヘンリー・カヴィル主演のサスペンス・アクション作品。上映時間93分と短いところが良い。結果的に主人公家族を事件に巻き込んでしまう父親役のブルース・ウィリス、冷徹な悪役を演じるシガニー・ウィーヴァーと、共演…

『009 RE:CYBORG』

言わずと知れた石ノ森章太郎原作による『サイボーグ009』を神山健治により完全新作として製作。キャラクターデザインを一新しながらも物語設定は原作を引き継ぐ。 もっと痛快とはいかないまでも娯楽大作なのかと思っていたら、そっちに行くのか!と驚く物語…

『推理作家ポー 最期の5日間』

数々の怪奇幻想小説を遺し1849年に40歳で死去したエドガー・アラン・ポー。未だ謎に包まれている最期の5日間で、こんな大事件に巻き込まれていたらスゴイね、という盛大なフィクション。ストーリーはミステリー作家の作品を模倣した殺人事件が起こるという、…

『アウトレイジ ビヨンド』

北野武作品では初の続編となり、前作『アウトレイジ』から5年後を舞台としている。前作で生き残った人たちが続投し、更に新たな出演者を加えて、前作を超えるスケールの非情な権力抗争が展開される。ちなみに前作で死んだ役の俳優が別の役柄で登場することは…

『エージェント・マロリー』

今どきでないリアルなスパイアクションを撮りたかったと言うスティーヴン・ソダーバーグ監督最新作。主演に総合格闘家ジーナ・カラーノを配し、ワイヤーアクションも特撮もない格闘シーンを見せる。無駄なカットを割らず“からだ”の重さを感じさせるアクショ…

『劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-』

テレビアニメシリーズ『TIGER & BUNNY』いわゆる『タイバニ』の劇場版。二部作のうちの一作目となる今作ではテレビ版の1・2話にオリジナルストーリーを加えて『タイバニ』の世界とキャラクターの紹介から、その魅力の入口までを描く、一見さん大歓迎の、まさ…

『ライク・サムワン・イン・ラブ』

母国イランを離れて製作された『トスカーナの贋作』に続くアッバス・キアロスタミ最新作の舞台は日本。一日に満たない時間の中で語られる物語で、監督の「私の映画は始まりがなく、終わりもない」との言葉通りに、始まりはともかく突然終わる。場合によって…

『天地明察』

江戸時代初期、ズレた暦を改めるため天体観測と算術を駆使して新しい暦を作成した男の物語。実話を基にした同名小説の映画化。監督・滝田洋二郎、音楽・久石譲、クセは強いがベテラン揃いの役者陣と、とりあえずは安定の一作。囲碁や算木という計算道具、算…

『白雪姫と鏡の女王』

今年2012年はグリム童話出版200周年だそうで、こちらはターセム・シン監督による“白雪姫”新解釈映画。美術や衣装をはじめ一部演出にターセム色は濃くあるものの、これまでのターセム作品のような禍々しさはない。監督自身が「大勢の人々が楽しめるファミリー…

『ファインディング・ニモ 3D』

ディズニーの過去作を3D化して劇場公開してゆくプロジェクト、今回は2003年公開のピクサー作品『ファインディング・ニモ』。「トイ・ストーリー」シリーズが『トイ・ストーリー3』公開時に3D化されて限定公開されたことを除けば、この3D化企画では初めてのピ…

『ハーバー・クライシス<湾岸危機>Black & White Episode 1』

2009年に台湾で大ヒットした刑事ものテレビドラマ『ブラック&ホワイト』の映画化。ドラマの3年前を描く。監督はテレビシリーズの演出を手がけたツァイ・ユエシュン。撮影はリー・ピンビン。テレビドラマ発の娯楽至上主義アクション映画に無粋なツッコミを入…

『最強のふたり』

本国フランスで歴代2位の興行成績を収め、日本でも東京国際映画祭でグランプリ、フランス映画祭で観客賞と、作品の間口の広さとクオリティの高さを確約してみせる、笑いと感動に満ちた傑作。若くして出会った二人の共同監督作品で今回が4作目にして日本初公…

『テイク・ディス・ワルツ』

長編初監督作となった前作『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』も素晴らしかったけれど、2作目の今作もスゴイことになっていた。サラ・ポーリーは役者としても好きだったけれど、今回で完全に「今後絶対に目が離せない」映画作家となった。『レボリューショ…

『Virginia/ヴァージニア』

ハリウッドの大スタジオから離れて、規模は小さいながらも良質で作家性に満ちた作品を製作し続けるコッポラの姿勢に感動する。『胡蝶の夢』『テトロ』と近年の作品はどれもハッとするほど美しい“映画”ばかりで大好き。 8月11日 公開 原題:TWIXT 監督・脚本…

『神弓 -KAMIYUMI-』

50万人の朝鮮市民が清の戦争捕虜となった1636年の“丙子の乱”を舞台とした韓国映画。国家反逆罪で殺された父から「妹を守れ」と託された弓を手に、清の捕虜となった妹を助けるべく大軍へ立ち向かう、パク・ヘイル演じる主人公ナミ。彼の華麗な弓さばきを始め…

『放課後ミッドナイターズ』

多くのTV番組オープニングやCMでアニメーションを手がけてきた竹清仁による初長編作品。2008年の『放課後MIDNIGHT』をベースにしている。その前衛ともパンクとも下らぬギャグとも判別できないような竹清仁の世界が楽しい。ただ作品世界を成立させるために書…

『プンサンケ』

キム・ギドク作品に衝撃を受けて飛び込みで助監督を務めた経緯を持つチョン・ジェンホン監督による長編2作目。製作総指揮と脚本はキム・ギドク。 南北分断国家だからこそ描ける、その切実で悲痛な願いと希望で満ちた想いを言葉語らぬ主人公の身体ひとつに託…