『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』

ヴィム・ヴェンダースによるピナ・バウシュに関する長編ドキュメンタリー。バレエもダンスも全く門外漢だし、ピナ・バウシュのことも名前しか知らなかったけれど、これがえらいこと面白かった。
そもそもヴィム・ヴェンダースピナ・バウシュのドキュメンタリーを製作することを約束したのはもう20年も前のことらしい。その最適な方法が見つからぬまま時が過ぎて、やっと3D技術がヴェンダースの目指す作品を実現するに足ると撮影を準備していた矢先にピナ・バウシュが亡くなってしまい、撮影も中止せざるを得なくなっていた。けれど彼女の遺したヴッパタール舞踏団の強い思いもあって撮影が行われたとのこと。そのため鑑賞後も彼女のパーソナルは全く分からないままという少しヘンなドキュメンタリー作品となっている。だけどこの作品を観れば彼女のソウルは感じることができる。この作品においてはそれだけで充分なんだと思う。
そして何と言っても3D映像が素晴らしい。前評判は聞いていても「何故3D?」と思っていたが、これが想像を遙かに超えていた。本作品は大きく3つのパートに分かれていて、ピナ・バウシュの生前に記録された映像と彼女についてダンサーたちが語るパート、そして劇場の舞台でのパフォーマンスを3D撮影されたパート、もう一つがそのパフォーマンスを屋外で3D撮影したパート。屋外での舞踏シーンも楽しいが、3D効果は他のフィクション作品とあまり相違なく感じられる。それでもモノレール車内や同駅でのシーンなどは印象的。特筆すべきはやはり劇場の舞台シーンで、その3D効果は素晴らしく、なかでも群舞シーンでの効果は絶大。集団の中でも一人一人のダンサーの存在がきちんと際立っていて、その空間感覚が衝撃的だった。
蛇足ではあるが、これから数年後、劇映画としての3Dがどう変わってゆくか分からないけれど、技術を物語に還元させるような“衝撃”を与えてくれる作品は少ないと思われる。けれど舞台作品を劇場で鑑賞するにあたって3Dという技術はこれまでと違う勘当を確実に与えてくれるように思う。

 

2月25日 公開
原題「PINA」
監督・脚本・製作:ヴィム・ヴェンダース
出演:ピナ・バウシュ/ヴッパタール舞踊団のダンサーたち
振付:ピナ・バウシュ
撮影:エレーヌ・ルヴァール
3Dスーパー・バイザー:フランソワ・ガルニエ
3Dプロデューサー:エルウィン・M・シュミット
編集:トニ・フロッシュハマー

【内容】
独自の舞踊芸術で演劇とダンスを融合させ、舞踊界に新しい世界を確立した天才舞踊家ピナ・バウシュ。2009年に亡くなった彼女の人生そのものともいえるヴッパタール舞踊団の不朽の名作を捉えた映像を、ドイツの巨匠ヴィム・ヴェンダースが3D映画化!

配給:ギャガ
2010年/ドイツ・フランス・イギリス/104分/カラー/ヴィスタ/SRD/字幕翻訳:吉川美奈子
(C)2010 NEUE ROAD MOVIES GMBH, EUROWIDE FILM PRODUCTION

公式サイト http://pina.gaga.ne.jp/

ミニパラ http://www.minipara.com/movies2012-1st/pina/

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