2013映画

『潔く柔く きよくやわく』(TIFF/P&l上映)

【覚書として】 原作マンガは未読だが人気があることは知っていた。コミックスで13巻とそれなりに長い物語を“どうにか”して“やっと”まとめました、という印象。まるで1クールのテレビドラマの総集編みたい。少女マンガを原作にした映画のほとんどは、どうし…

『エリジウム』

【覚書として】 『第9地区』での衝撃的な長編デビューに続く2作目にしてビッグバジェット作品という。大味なところもあるけれど、これは面白かった、大満足。テーマに目新しいこともなく、ストーリーテリングも決して巧いとは言えない。それでもこの作品に魅…

『スター・トレック イントゥ・ダークネス』

J.J.エイブラムスによるリブート版スター・トレックの第2弾。ノンストップと言ってよいだろう物語展開の連続が楽しく、良い意味で“普通に”面白かった。 前置き。これまで「スター・トレック」シリーズは意図的に避けていた。劇場版もテレビシリーズも作品数…

『タイピスト!』

1950年代末のフランスを舞台にしたロマコメの上に「目標!タイプライター早打ち選手権優勝」なスポ根要素をコミカルに乗算して描く。これがなかなか楽しい作品。なによりもまず、作品全体をいろどる50'sな色彩にあふれた美術や衣装、小道具が画面を埋めてい…

『風立ちぬ』

結論から先に書くならば、好きな作品ではある。でも咀嚼できていないので、機会をみてもう一度観たいと思っている。これまで公開前のレビューや公開後のさまざまな感想や批評をざっと斜めに読んではいたが、なるほど賛否どちらの意見にも納得はできる。ただ…

『モンスターズ・ユニバーシティ』

『モンスターズ・インク』の劇場用長編2作目は昨今流行りの前日譚で、主人公たちの大学生活を描く。しかも物語はサリーではなくマイクを中心にして展開してゆく。これがなかなかビターな物語になっていて驚く。“こわがらせ屋”になることを夢見るマイクは、勉…

『SHORT PEACE』

大友克洋の新作短編『火要鎮(ひのようじん)』が最大の注目となる“日本”をテーマに据えたオムニバス作品。どれも楽しかったが、白眉はやはり『火要鎮』か。絵巻物のイメージによる疑似ワンカットな冒頭に「またこういう手法なのか」と、ややテンションの下が…

『アンコール!!』

まあどうしても『glee』を思い出さずにはいられない“ロックやポップスを歌う合唱もの”ということになるのだが、その実この作品で描かれているのは、本人が思っている以上に存在の大きかった妻を亡くした男の“愛のかたち”の物語。その意味では合唱でなくても…

『嘆きのピエタ』

キム・ギドクの劇映画としては5年ぶりとなる、2012年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受信作品。これが素晴らしかったのだけれど、そこはキム・ギドク作品、気軽に人に薦めることのできない、重い石を観客の心の中に残す作品だった。観ている間も絶え間なく感嘆…

『オブリビオン』

【覚書として】 まずは何より良い意味で正当なトム・クルーズ映画であったことに感嘆する。やはりこの人のセルフプロデュースの巧みさはスゴイと思う。“トム・クルーズ”というブランドの持つ影響力もイメージも客観的に把握しいて、それを上手に転がしている…

『はじまりのみち』

『クレヨンしんちゃん』シリーズなどの原恵一監督による初の実写長編作品は、木下恵介生誕100年記念映画。原恵一監督自身が熱烈な木下恵介作品のファンとのこと。戦中に映画を断念した木下恵介がふたたび“監督”に戻るまでの物語を病床の母との関係を中心に描…

『グランド・マスター』

ウォン・カーウァイ6年振りの新作はイップ・マンを題材としたカンフーもの。とは言えウォン・カーウァイ作品、ありきたりなカンフー映画になるはずもなく、映像の快楽に酔う123分。役者が数年をかけて習得したカンフーを、これでもかとハイスピード撮影を駆…

『建築学概論』

韓国で恋愛映画としては異例の大ヒットとなった“初恋”もの。まあ、なんともやりきれない感傷的な気持ちにしてくれる作品。とくにイイ歳を過ぎたオッサンの心には深く響くらしい。学生時代の過去と時を経た現在の二つの物語を平行して描いてゆくスタイルから…

『きっと、うまくいく』

近年のインド製エンターテインメント作品を紹介する「ボリウッド4」からの2009年ラージクマール・ヒラニ監督作品。これは面白い。170分という長尺もまったく気にならず、心の底から楽しんだ。何より脚本が良くできている。愛おしき“おバカ3人”の痛快大学生活…

『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』

デレク・シアンフランスが『ブルーバレンタイン』に続いてライアン・ゴズリングを主演に迎えた最新作は、二人の男とその子どもたちの15年に渡る3つの物語の交差を描く。根無し草のバイク乗りを演じるライアン・ゴズリングに加え、彼と対峙するエリート新米警…

『セレステ∞ジェシー』

4館という限定公開から全米586館へと拡大公開されたインディペンデント作品。主演のラシダ・ジョーンズとウィル・マコーマックの共同脚本は二人の実体験を基にしているそうで、スタッフやキャストの一部は彼女たちの友人や家族だという。乱暴な言い方ではあ…

『ラストスタンド』

これは楽しかった。シュワルツェネッガー世代(なんて言葉がある?)ではあるけれど“復活作”という惹句には心躍らず。何よりもこの“やりすぎ”感を今のハリウッド映画に観られたことに過剰反応する。これぞ韓国映画監督のハリウッド進出の意義か。 公開中(4月27…

『ジャッキー・コーガン』

これは何でしょうね。やりたいことは分かるんだけれど、大事から小事までことごとく空回りしている印象。わざわざサラウンドでこれ見よがしに聴かせる周囲のわずかな話し声とか、耳障りでしかなかった。そういえば『ジェシー・ジェームズの暗殺』もあまり好…

『リンカーン』

教科書みたいとか真面目すぎるとか日本人には分からないとか、いろいろな評判を聞いていたけれど、なんだ面白いじゃないか。しっかりときちんと“映画”でもあったし。スピルバーグって若いころは嫌いだったけど、ある年齢を過ぎると突然好きになった。この作…

『モンスター』

高岡早紀の脱ぎっぷりだけでなく幾度ものベッドシーンの話題ばかりが先行している、百田尚樹の同名小説からの映画化作品。結果から言えば私にはピンとくるものはなかった。やりたいコトは理解できるし、目指したい場所も判るけれど、物語の語り口にどうにも…

『ハッシュパピー バスタブ島の少女』

ベン・ザイトリンの29歳にして長編デビュー作となる本作品は、サンダンス映画祭のグランプリと撮影賞を受賞し、カンヌ国際映画祭でもカメラドール(新人賞)を獲得、果ては主人公を演じたクヮヴェンジャネ・ウォレスが史上最年少でアカデミー賞主演女優賞にノ…

『カルテット!人生のオペラハウス』

ダスティン・ホフマンの75歳にして初監督作品は、やはり70歳台の役者たちによる「人生はまだまだこれから」な物語。とてもステキな作品でした。メインキャストにマギー・スミス、トム・コートネイ、ポーリーン・コリンズとイギリスを代表する蕭々たる名優た…

『ヒッチコック』

言わずと知れた映画監督アルフレッド・ヒッチコックの『サイコ』撮影時の舞台裏を描いた伝記もの。波乱万丈なメイキング物語に、ある種の倦怠期であった妻アルマ・レヴィルとのその後に及ぶ確固たる関係を築く姿を描いてゆく。監督は本作が初の長編劇映画と…

『シュガー・ラッシユ』

『シンプソンズ』シリーズを手掛けていたリッチ・ムーアによる初の劇場用長編監督作。各所で言われているとおり、ゲーム版『トイ・ストーリー』という説明が最も端的か。日本製を含む有名ゲームの悪役を周囲に配しながら、物語は3つのオリジナルゲーム世界を…

『オズ はじまりの戦い』

ライマン・フランク・ボームによる児童書『オズの魔法使い』の前日譚で、原作では描かれなかった“偉大なる魔法使いオズ”の誕生の物語を描く。『オズの魔法使い』の映像化作品は数多いが、一番有名なのはやはり1939年製作のヴィクター・フレミング監督、ジュ…

『ジャンゴ 繋がれざる者』

タランティーノの最新作はアメリカ南北戦争直前の時代劇をマカロニ・ウエスタン調で、さらに黒人奴隷制をモチーフに描くという、これまでありそうでなかった(?)キレッキレの西部劇。西部劇に奴隷制を盛り込んだことや、奴隷制を安いヒューマニズム的視点で…

『マーサ、あるいはマーシー・メイ』

2011年のサンダンス映画祭で監督賞を受賞したショーン・ダーキン初長編作品。カルト集団から脱走した少女の2週間の物語。彼女が彼らと出会ってから逃げ出すまでの2年間の物語と交互に語られてゆく。この二つの時間軸を安易な特徴付けすることなく並列に描く…

『横道世之介』

吉田修一の同名小説からの映画化。160分と長尺ながら、これが抜群に面白かった。1987年を舞台に、主人公・横道世之介と関わった人々を描いてゆく、どちらかといえば群像劇。そして彼らが16年後にふと思い出す、それぞれにとっての横道世之介の存在が微笑まし…

『バチェロレッテ あの子が結婚するなんて!』

オフ・ブロードウェイ戯曲の映画化で、作者レスリー・ヘッドランドによる脚本・初監督作品。友人の結婚式に集まった高校同級生の“バチェロレッテ(独身女)”たちが式前夜から当日に繰り広げる、酒とドラッグと下ネタ満載のドタバタ劇。まるで某映画と某ドラマ…

『世界にひとつのプレイブック』

『ザ・ファイター』に続くデヴィッド・O・ラッセルの最新作。企画は『ザ・ファイター』の前から進行していた作品とのこと。精神障害を抱えた主人公二人のラブストーリーでもあることから“喪失と再生の物語”とか感動的なヒューマン・ドラマの印象も強いが、思…