『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』

デレク・シアンフランスが『ブルーバレンタイン』に続いてライアン・ゴズリングを主演に迎えた最新作は、二人の男とその子どもたちの15年に渡る3つの物語の交差を描く。根無し草のバイク乗りを演じるライアン・ゴズリングに加え、彼と対峙するエリート新米警察官役のブラッドリー・クーパーという顔合わせに鑑賞前から期待値ばかり上がるのだが、その期待を軽く越えてみせる物語に興奮が止まらない141分。
とくにライアン・ゴズリングのパートが魅力的で、鑑賞中ずっとこの男ルークの社会的なダメさと愛情深い素直さに感情を引っ張られてしまう。奇しくも表面的には『ドライヴ』と似たような役柄を演じることになったライアン・ゴズリングだが、本作のルークが抱える内面の実直さとその行動の愚直さとのズレとでも言おうか、“このようにしか生きられない”感情の軋みは、『ドライヴ』の主人公よりもはるかに“現実”だ。
そして“宿命”的に互いの人生を交差させた二人の男の物語は、やはり“宿命”的に出会った息子たちそれぞれに父親が背負ってきた“負”を継承させることで続いてゆく。このミドルティーンになった息子たちを演じるデイン・デハーンエモリー・コーエンの二人がまた素晴らしい。とりわけライアン・ゴズリング演じるルークの息子役デイン・デハーンの繊細さと暴力性が未分化な印象を醸す存在感に魅せられる。息子たちのパートだけで一本の作品として観たいくらいだ。
監督デレク・シアンフランスは自身のフィルモグラフィはすべて「家族にまつわる物語」だと語っている。前作『ブルーバレンタイン』とはまるで違う印象の今作もまた、父から子へ引き継がれてゆく愛と罪の物語を、まさに叙事詩と呼ぶべき美しさで描きあげてゆく。


5月25日 公開
原題:THE PLACE BEYOND THE PINES
監督:デレク・シアンフランス
出演:ライアン・ゴズリング/ブラッドリー・クーパー/エヴァ・メンデス/レイ・リオッタ/ローズ・バーン/ベン・メンデルソーン/デイン・デハーン/エモリー・コーエン
脚本:デレク・シアンフランス/ベン・コッチオ/ダリウス・マーダー 撮影:ショーン・ボビット 音楽:マイク・パットン

【ストーリー】
天才的なライダーのルークは、移動遊園地でバイクショーを行いその日暮らしの生活を送っていた。しかしかつての恋人ロミーナがルークとの子を密かに生んでいたことを知ると、二人を養うため銀行強盗を行い荒稼ぎをする。一方、新米警官のエイヴリーは立身出世に野心を燃やし、ルークを追い詰める。いざ2人が対峙したときエイヴリーは重大なミスを犯してしまう。自分の過ちを深く恥じ入るエイヴリーだったが、この一件で皮肉にも周囲から高く評価され、複雑な思いのまま腐敗しきった警察に一人立ち向かう。15年後、壮大なドラマは息子たちの世代に引き継がれ親の罪と向き合うことになるが。

配給:ファインフィルムズ
2012年/アメリカ/141分/カラー/英語/シネスコ/ドルビーデジタル/PG-12
(C)2012 KIMMEL DISTRIBUTION, LLC.ALL RIGHTS RESERVED.

公式サイト http://www.finefilms.co.jp/pines/

ミニパラ http://www.minipara.com/movies2013-2nd/pines/

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