『グランド・マスター』

ウォン・カーウァイ6年振りの新作はイップ・マンを題材としたカンフーもの。とは言えウォン・カーウァイ作品、ありきたりなカンフー映画になるはずもなく、映像の快楽に酔う123分。役者が数年をかけて習得したカンフーを、これでもかとハイスピード撮影を駆使して描き出すアクションの美しさに圧倒される。しかもアクション部分の“動”だけでなく、ドラマ部分の“静”(実際には静ではないが)も、すべてのショットがケレンとロマンティシズムにあふれていて、その映像の濃さに眩暈を覚える。トニー・レオンも素晴らしかったが、チャン・ツィイーの美しさが絶品で久し振りに彼女の魅力を堪能できる。過去の監督作品が苦手だとツライかも。


5月31日 公開
原題:一代宗師 THE GRANDMASTER
監督:ウォン・カーウァイ
出演:トニー・レオン/チャン・ツィイー/チャン・チェン/チャオ・ベンシャン/シャオ・シェンヤン/ソン・ヘギョ/マックス・チャン/ワン・チンシアン
脚本:ゾウ・ジンジ/シュー・ハオフォン/ウォン・カーウァイ 撮影:フィリップ・ル・スール 武術指導:ユエン・ウーピン 音楽:梅林茂/ナタニエル・メカリー 編集:ウィリアム・チャン

【ストーリー】
世界を呑みこむ戦争の足音が、刻一刻と迫る1930年代の中国。北の八卦掌の宗師であるゴン・パオセンは引退を決意し、その地位と生涯をかけた南北統一の使命を譲る後継者を探していた。候補は一番弟子のマーサンと、南の詠春拳の宗師・イップ・マン。パオセンの娘で、奥義六十四手をただ一人受け継ぐゴン・ルコメイも、女としての幸せを願う父の反対を押し切り名乗りを上げる。だが、野望に目の眩んだマーサンがパオセンを殺害。ルオメイはイップ・マンへの想いも、父の望みも捨てて、仇討ちを誓う。後継者争いと復讐劇が絡み合う、壮絶な闘いの幕が切って落とされた。

配給:ギャガ
2013年/香港、中国、フランス合作/123分/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/字幕翻訳:水野衛子
(C)2013 Block 2 Pictures Inc.All Rights Reserved.

公式サイト http://grandmaster.gaga.ne.jp

ミニパラ http://www.minipara.com/movies2013-2nd/grandmaster/

イップ・マン 序章&葉問 Blu-rayツインパック

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『建築学概論』

韓国で恋愛映画としては異例の大ヒットとなった“初恋”もの。まあ、なんともやりきれない感傷的な気持ちにしてくれる作品。とくにイイ歳を過ぎたオッサンの心には深く響くらしい。学生時代の過去と時を経た現在の二つの物語を平行して描いてゆくスタイルからは、近年では『サニー 永遠の仲間たち』や『横道世之介』にも共通する印象を覚えるが、本作は何よりも岩井俊二監督作品『Love Lettre』を想い出す。ともに学生時代の“初恋”ものであり、その物語構成や露出オーバーな映像など連想する部分は多い。ただ物語設定もカメラワークも『Love Lettre』ほどトリッキーではないが。今となってはもどかしい学生時代の“初恋”物語と、再会した二人が家の改修工事の時間に乗せて15年の空白を埋めてゆく物語を、丁寧に重ねて紡いでゆく脚本が良い。そして何よりも、学生時代と現在それぞれのスンミンとソヨンを演じた役者2組4人が圧倒的に素晴らしい。また学生時代のスンミンに恋のアドバイスをするナプトゥク役のチョ・ジョンソクの好演も強く印象の残る。これから先、折に触れ幾度となく観ることになるであろう作品。


5月18日 公開
監督・脚本:イ・ヨンジュ
出演:オム・テウン/ハン・ガイン/イ・ジェフン/スジ/チョ・ジョンソク/コ・ジュニ
撮影:チョ・サンユン 美術:ウ・スンミ 編集:キム・サンボム/キム・ジェボム 音楽:イ・ジス

【ストーリー】
建築学科に通う大学1年のスンミンは、“建築学概論”の授業で音楽学科の女子学生ソヨンに出会い、一目で恋に落ちた。しかし、恋に奥手なスンミンはなかなか告白できないまま、小さな誤解からソヨンと遠ざかってしまう。それから15年後、建築士になったスンミンの前に、ソヨンが突然現れ、家を建てて欲しいと言う。その建築の過程で次第に明らかになるソヨンの素性。そして、よみがえる記憶と新たに生まれる温かな感情。しかしスンミンには婚約者がいた。

配給:アット エンタテインメント
2012年/韓国/117分/韓国語/カラー/シネスコ/ドルビーSRD
(C)2012 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

公式サイト http://www.kenchikumovie.com


Love Letter [Blu-ray]

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『きっと、うまくいく』

近年のインド製エンターテインメント作品を紹介する「ボリウッド4」からの2009年ラージクマール・ヒラニ監督作品。これは面白い。170分という長尺もまったく気にならず、心の底から楽しんだ。何より脚本が良くできている。愛おしき“おバカ3人”の痛快大学生活と、平行して描かれる10年後の彼らの物語の結末は、ド直球な極上エンターテインメントとして爽快な後味を残す。それでいながら経済発展の著しい現代インドの学歴競争社会を笑い飛ばしてみせる絶妙の物語バランスが素晴らしい。そしてすでに各所で言われている通り、この高度成長経済のスピードの隙間を泳ぎ渡ってみせる物語は1960年代にクレイジーキャッツ主演で描かれた東宝娯楽作品を思わせる。本当にとても面白い映画だし、もう一度観たいとも思うのだが、ただ不思議なのは鑑賞後それほど気持ちに残らなかったことか。


5月18日 公開
原題:3idiots
監督:ラージクマール・ヒラニ
出演:アーミル・カーン/カリーナ・カプール/R.マーダヴァン/シャルマン・ジョージー/ボーマン・イラニ/オーミ・ヴァイディヤ
脚本:ラージクマール・ヒラニ/アビジャート・ジョーシー/ヴィドゥ・ヴィノード・チョプラ 撮影:C.K.ムラリーダラン 音楽:シャンタヌ・モイトラ/アトゥル・ラニンガ/サンジャイ・ワンドレカール 編集:ランジート・バハドウル/ラージクマール・ヒラニ

【ストーリー】
日の出の勢いで躍進するインドの未来を担うエリート軍団を輩出する、超難関理系大学ICE。未来のエンジニアを目指す若き天才が競い合うキャンパスで、型破りな自由人のランチョー、機械よりも動物が大好きなファラン、なんでも神頼みの苦学生ラージューの“三バカトリオ”が、鬼学長を激怒させるハチャメチャ珍騒動を巻き起こす。彼らの合言葉は「きっと、うまくいく!!」
それから10年後、ラファンとラージューは行方不明になったランチョーを探す旅に出る。

配給:日活
2009年/インド/170分/カラー/5.1ch/字幕:松岡環/字幕監修:いとうせいこう
(C)Vinod Chopra Films Pvt Ltd 2009.All rights reserved.

公式サイト http://bollywood-4.com/index.html

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『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』

デレク・シアンフランスが『ブルーバレンタイン』に続いてライアン・ゴズリングを主演に迎えた最新作は、二人の男とその子どもたちの15年に渡る3つの物語の交差を描く。根無し草のバイク乗りを演じるライアン・ゴズリングに加え、彼と対峙するエリート新米警察官役のブラッドリー・クーパーという顔合わせに鑑賞前から期待値ばかり上がるのだが、その期待を軽く越えてみせる物語に興奮が止まらない141分。
とくにライアン・ゴズリングのパートが魅力的で、鑑賞中ずっとこの男ルークの社会的なダメさと愛情深い素直さに感情を引っ張られてしまう。奇しくも表面的には『ドライヴ』と似たような役柄を演じることになったライアン・ゴズリングだが、本作のルークが抱える内面の実直さとその行動の愚直さとのズレとでも言おうか、“このようにしか生きられない”感情の軋みは、『ドライヴ』の主人公よりもはるかに“現実”だ。
そして“宿命”的に互いの人生を交差させた二人の男の物語は、やはり“宿命”的に出会った息子たちそれぞれに父親が背負ってきた“負”を継承させることで続いてゆく。このミドルティーンになった息子たちを演じるデイン・デハーンエモリー・コーエンの二人がまた素晴らしい。とりわけライアン・ゴズリング演じるルークの息子役デイン・デハーンの繊細さと暴力性が未分化な印象を醸す存在感に魅せられる。息子たちのパートだけで一本の作品として観たいくらいだ。
監督デレク・シアンフランスは自身のフィルモグラフィはすべて「家族にまつわる物語」だと語っている。前作『ブルーバレンタイン』とはまるで違う印象の今作もまた、父から子へ引き継がれてゆく愛と罪の物語を、まさに叙事詩と呼ぶべき美しさで描きあげてゆく。


5月25日 公開
原題:THE PLACE BEYOND THE PINES
監督:デレク・シアンフランス
出演:ライアン・ゴズリング/ブラッドリー・クーパー/エヴァ・メンデス/レイ・リオッタ/ローズ・バーン/ベン・メンデルソーン/デイン・デハーン/エモリー・コーエン
脚本:デレク・シアンフランス/ベン・コッチオ/ダリウス・マーダー 撮影:ショーン・ボビット 音楽:マイク・パットン

【ストーリー】
天才的なライダーのルークは、移動遊園地でバイクショーを行いその日暮らしの生活を送っていた。しかしかつての恋人ロミーナがルークとの子を密かに生んでいたことを知ると、二人を養うため銀行強盗を行い荒稼ぎをする。一方、新米警官のエイヴリーは立身出世に野心を燃やし、ルークを追い詰める。いざ2人が対峙したときエイヴリーは重大なミスを犯してしまう。自分の過ちを深く恥じ入るエイヴリーだったが、この一件で皮肉にも周囲から高く評価され、複雑な思いのまま腐敗しきった警察に一人立ち向かう。15年後、壮大なドラマは息子たちの世代に引き継がれ親の罪と向き合うことになるが。

配給:ファインフィルムズ
2012年/アメリカ/141分/カラー/英語/シネスコ/ドルビーデジタル/PG-12
(C)2012 KIMMEL DISTRIBUTION, LLC.ALL RIGHTS RESERVED.

公式サイト http://www.finefilms.co.jp/pines/

ミニパラ http://www.minipara.com/movies2013-2nd/pines/

ブルーバレンタイン [Blu-ray]

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ドライヴ [Blu-ray]

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『セレステ∞ジェシー』

4館という限定公開から全米586館へと拡大公開されたインディペンデント作品。主演のラシダ・ジョーンズとウィル・マコーマックの共同脚本は二人の実体験を基にしているそうで、スタッフやキャストの一部は彼女たちの友人や家族だという。乱暴な言い方ではあるが、そんなラシダ・ジョーンズのための映画。確かに面白かった。主人公セレステの感情も理解できるし、随所に散りばめた小ネタにも笑えた。けれど感情移入できたかとなると別の話で、男性である私にはピンとくるものはなかった。これは個人差もあるだろうけれど。ただ鑑賞後に同性異性を問わず話題に尽きない題材となる物語だろうし、よくあるロマコメとも一線を画す作品でもある。


5月25日 公開
原題:CELESTE AND JESSE FOREVER
監督:リー・トランド・クリーガー
出演:ラシダ・ジョーンズ/アンディ・サムバーグ/アリ・グレイナー/エリック・クリスチャン・オルセン/ウィル・マコーマッククリス・メッシーナ/レベッカ・ダヤン/イライジャ・ウッド/エマ・ロバーツ
脚本:ラシダ・ジョーンズ/ウィル・マコーマック 撮影:ダヴィッド・ランゼンバーグ プロダクション・デザイナー:イアン・フィリップス 音楽:サニー・レヴィン&ザック・カウイ 編集:ヤナ・ゴースカヤ

【ストーリー】
笑いもノリもぴったりで、いつも一緒の2人は、誰もが羨むパーフェクトなカップルだけど、キャリアを重ねるセレステの一方、ジェシーは売れないイラストレーター。そんな関係は、30代に突入しても相変わらず。ついにセレステは離婚を決意。だって最高に気の合うジェシーとは「永遠に親友でいたいから」。未練たらたらなジェシーの一方、セレステは毎日一緒に過ごして笑い合う“親友”の関係に大満足。しかしある日、ジェシーから「他に好きな人ができた」と突然打ち明けられたセレステは、一転動揺する。

配給:クロックワークス
2012年/アメリカ/92分
(C)C&J Forever, LLC. All rights reserved.

公式サイト http://celeste-and-jesse.com

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『グランド・マスター』(5/31公開)

映像の快楽に酔う123分。静(実際には静ではないが)も動も、すべてのショットがケレンとロマンティシズムにあふれていて、その濃さに思わずムフッとニヤけてしまう。私は大満足だったが、嫌いな人も多そう。チャン・ツィイーが久し振りにステキ。
http://grandmaster.gaga.ne.jp

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『ラストスタンド』

これは楽しかった。シュワルツェネッガー世代(なんて言葉がある?)ではあるけれど“復活作”という惹句には心躍らず。何よりもこの“やりすぎ”感を今のハリウッド映画に観られたことに過剰反応する。これぞ韓国映画監督のハリウッド進出の意義か。


公開中(4月27日)
原題:THE LAST STAND
監督:キム・ジウン
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/フォレスト・ウィテカー/ジョニー・ノックスビル/ロドリゴ・サントロ

【ストーリー】
ロサンゼルス市警の敏腕刑事として活躍していたオーウェンズは、今では第一線を退き、メキシコとの国境に近い田舎町で保安官を務めていた。そんなある日、逃走した警官殺しの凶悪犯が町に向かっているとの知らせが入り、警察やFBIの応援も間に合わないと知ったオーウェンズは、戦闘経験のない部下や町の仲間、銃器オタクらでチームを組んで凶悪犯を迎え撃つ…。

配給:松竹
2013年/アメリカ/107分
(C)2012 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

公式サイト http://laststand.jp

ミニパラ http://www.minipara.com/movies2013-1st/laststand/

悪魔を見た プレミアム・エディション (2枚組) [Blu-ray]

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