『ハーモニー 心をつなぐ歌』

実話を基にしたという女子刑務所合唱団の物語。まあ、最初から観客をいかに泣かせるかを大前提にしている作品なので大泣きできることは判っていたけれど、それでもやはり泣けてしまう作品でした。脚本・監督のカン・テギュは本作品が長編初監督作品とのこと。確かにところどころで非常に演出の甘いところは散見しているが、全体的には良い作品だったと思う。
【ここから先はネタバレを含みます】
けれど、どうしても納得できない箇所が1カ所ある。
物語の中盤、女子刑務所で結成された合唱団が半年の様子見期間を終えて所内で成果を初披露するシーン。それまで比較的スタンダードな歌ばかりを練習してた合唱団が突然ゴスペル調のポップスを歌い出すのだ。まあそれは良い。しかし劇中ではピアノ伴奏だけのはずなのに、そこで流れる曲にはリズム隊や弦楽器なども入ったアレンジになっていて、しかも歌声も別撮り感満載なのだ。ここで一気にそれまでのテンションが落ちてしまった。何の伏線もなく突然歌って踊るポップスになるのも不自然だし、この場面はやはりピアノとコーラスだけで構成して観客を魅了させる場面であるべきだろうと思う。百歩譲ってここはこれで良いとしても、このゴスペル調ポップス路線はこの場面以降で効果的に使われることがない。一度だけ看守官がはじけるシーンで彼女が唄う歌がポップスなだけで、それ以外はスタンダード曲しか流れないのだ。物語の中盤でこれだけ盛り上げているのだから、クライマックスの合唱大会でも歌うべきであろう。けれどクライマックスではスタンダードな優等生風合唱で終わらせるのである。劇中で歌われる楽曲がどこまで実話の則しているのかは判らないが、物語的観点で回収できない設定ならば積極的に改変しても構わないと思うし、むしろ劇映画としてはそうするべきなのではないかとさえ思う。
とはいえ泣かせる映画としては佳作だと思うし、どれだけ合唱団として成長していっても、彼女たちが囚人であるという事実からは逃れられない物語展開には心が痛む。


1月22日 公開
英題「HARMONY」
監督・脚本:カン・テギュ
出演:キム・ユンジン/ナ・ムニ/カン・イェウォン

【ストーリー】
18か月後には子供を養子に出さなければならないジョンヘ。家族に見捨てられた死刑囚ムノク。哀しい事件によって未来を閉ざされた娘ユミ。彼女たちは「歌」を通じて希望を見出し、愛する者のために感動の舞台を作り上げていく。

配給:CJ Entertainment Japan
2010年/韓国/115分/カラー/ビスタサイズ/SRD
(C)2010 CJ Entertainment Inc. All Rights Reserved

公式サイト http://www.harmony-movie.com/

ミニパラ http://www.minipara.com/movies2010-4th/harmony/

ハーモニー [DVD]

ハーモニー [DVD]