『あの日、欲望の大地で』
『バベル』『21グラム』の脚本家、ギジェルモ・アリアガの初監督作品。
もちろん脚本もアリアガ自身によるもの。
けれど、物語だけ追うとただの昼ドラにしか見えない。
邦題が悪いことも大きな要因であろう。
9月26日 公開
原題「THE BURNING PLAIN」
監督:ギジェルモ・アリアガ
出演:シャーリーズ・セロン/キム・ベイシンガー/ジェニファー・ローレンス【ストーリー】
行きずりの情事を繰り返し、孤独を守るレストランマネージャー・シルヴィア。ある日彼女のもとに、娘と名乗る少女マリアが現れた。突然の出会いに激しく動揺するシルヴィアに、ニュー・メキシコでの若き日の過ちがよみがえってくる。かつて、心の傷から不倫に走った母ジーナ。母と同じ宿命をたどることを恐れ、すべてを捨てて逃げ出したシルヴィア。灼熱の大地で渇きを満たすように愛を求めた女たちの秘密とは。そしてシルヴィアは、自ら手放した愛を取り戻せるのだろうか。配給:東北新社
2008年/アメリカ/106分/カラー/シネマスコープ/SRD・DTS・SDDS
(C)2008 2929 Productions LLC, All rights reserved.
アリアガの得意とする、
時間と空間の境界を取り払って同時進行で物語を進めていく脚本構成は、
本作品でも健在。
でも、
今さらその手法に新鮮味はないし、
ここまで細かくシャッフルする必要性もあまり感じない。
それでも、
アリアガの脚本構成術は作品の大きな「ウリ」だから固執するのだろうし、
この脚本構成故に本作品が
「昼ドラ」から一段上等に見える物語となっているとも思える。
本作品において、
そんな「昼ドラ」的ストーリーよりも観るべきは、
主演女優3人であろう。
製作総指揮を兼任するシャーリーズ・セロン、
キム・ベイシンガー、
そしてセロンの10代を演じるジェニファー・ローレンス。
3人とも必要以上に感情を露吐せず、静かに悩み葛藤してみせる。
凡庸な物語から3人の女優たちがイマジネーションを膨らませていることで、
セロン演じる主人公の抱える孤独や虚無感などにも共感できる余地を生み、
ベイシンガー演じる母親の心のゆらぎも理解できるだろう。
特にセロンの推薦でキャスティングされたキム・ベイシンガーが良い。
ここしばらくパッとした作品のなかったベイシンガーの久々の快作。
役者たちの魅力がアリアガ監督により引き出されているのであれば、
こんなトリッキーな脚本ばかり書いていないで、
今すぐ別な物語の可能性を探すべきだと思う。
また、
ロバート・エルスウィットによる映像も美しい。
ちなみにメインスタッフには名を連ねていないが、
ジョン・トールがセロンの経営するレストランのある町のパートを撮影している。
メインカメラマンのエルスウィットのスケジュールが合わなかったためらしい。
いずれにせよ、
これからしばらくはギジェルモ・アリアガ監督作品を観続けていくだろう。
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