『レスラー』

世代によっては既に知らない人の方が多いであろう、
ミッキー・ロークの大復活作品。
面白かったし、良くできていると思うけれど、
もう一歩何かが足りないと感じさせる作品。


6月13日 公開
原題「THE WRESTLER」
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ミッキー・ローク/マリサ・トメイ/エヴァン・レイチェル・ウッド

【ストーリー】
金・家族・名声をも失った元人気プロレスラーのランディ。トレーラーハウスで1人生活する彼にとっては、プロレスの仲間だけがファミリーと呼べる存在であり、リングの上だけがホームと呼べる場所だ。しかし、そんな彼も肉体の衰えには勝てず、引退を余儀なくされる時がやってくる。新しい仕事に就き、疎遠にしていた娘との絆を修復し、恋人を見つけ人生の再出発をはかろうとするランディだが・・・。

配給:日活
2008年/アメリカ・フランス/109分/カラー/35mm/シネマスコープ/ドルビーデジタル
(C)2008 OFF THE TOP ROPE, INC. AND WILD BUNCH.

公式サイト http://www.wrestler.jp/

今に始まったことではないが、
アカデミー賞がらみの作品って、
良い映画だけど「もう一歩何かが足りない」作品が多い。
本年度の
スラムドッグ$ミリオネア
『ベンジャミン・バトン〜』
でも同じような感想を持った。
個人的偏見だろうけど。

確かに、
ミッキー・ローク自身の人生をも投影したような、
気合い入りまくりの演技は特筆に値するし、
作品の主軸となる
「過去の栄光ゆえにその世界でしか生きていけない男」
という物語にも心を動かされる。

けれども、やはり、
何かが足りないのである。

物語はすべて、
ミッキー・ローク演じる主人公を中心に描かれており、
おそらく彼が出ていないシーンはない。
ほぼ一人称とも言えるこのスタイルを取ることで、
他の登場人物がおざなりになってしまうことは、
ある程度仕方のないことだと思うが、
それでも、
もう少し物語の膨らみというか、
横の広がりがあった方が良かったと思う。

スタジオ側が推すニコラス・ケイジではなく、
ミッキー・ローク主演を押し進めた為、
大幅な予算削減を余儀なくされ、
ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞するまで
アメリカ国内での配給さえ決まったいなかったほどの
「小さな」作品となってしまったことが、
現実的な部分で物語の広がりを阻んでいたのかもしれない。

逆に言えば、
作品としてそれだけ追い込まれていたからこそ、
ミッキー・ロークの大復活劇となったのかもしれないし、
そう考えると、また複雑な気持ちにもなる。

もし、
物語の深さを感じることができる、
撮影済みでカットされたシーンがあるならば、
DVD化の際に「完全版」を作って欲しいものである。

とはいえ、
観れば楽しめるし、充分に良い映画だと思う。

ちなみに、
ミッキー・ロークは撮影で、
本物のプロレスラーと
本物のプロレス・ファンの前で
本物の試合をしており、
劇中には20名以上のプロレスラーが出演しているとのこと。
プロレスファンでない私は一人も知らないけど・・・。

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