『ベルサイユの子』

他作品撮影中に急性肺炎のため37歳で急逝した
ギョーム・ドパルデュー主演作品。
本作品が映画デビューとなるエンゾ役の少年
マックス・ベゼット・ド・マルグレーヴがかわいい。


5月2日 公開
原題「Versailles
監督/脚本:ピエール・ショレール
主演:ギョーム・ドパルデュー/マックス・ベゼット・ド・マルグレーヴ/ジュデット・シュムラ

【ストーリー】
パリの路上で暮らす若い母親ニーナと幼い息子エンゾ。ある夜、ホームレス支援団体に声をかけられ、ベルサイユ宮殿のそばにある施設へ搬送される。翌朝、パリへ戻ろうと最寄りの駅へ向かう途中で2人は森の迷い、粗末な小屋の前で焚き火をする男ダミアンと出会う。焚き火の前で少しずつ会話を交わすニーナとダミアンは、いつしか肌を重ね合わせるが、翌朝、ニーナは幼いエンゾを置いたまま姿を消していた。
置き去られたエンゾに困惑するダミアンだったが、共に暮らすうちに情愛が生まれるようになる。一方、生活を立て直そうと、新聞記事を頼りに介護施設を訪ね職を得たニーナが、エンゾを迎えに森へ戻ったときには2人の姿はなかった。
ダミアンはエンゾのために社会復帰を決心し、疎遠になっていた父親を訪ねる。日雇いの仕事に就き、エンゾを学校に通わせるべく、エンゾを認知して父親となるダミアン。しかしある晩、エンゾはダミアンに尋ねる。「小屋へはいつもどるの?」

配給:ザジフィルムズ
2008年/フランス/113分/ビスタサイズ/ドルビーSRD
(C)Les Films Pelleas 2008

公式サイト http://www.zaziefilms.com/versailles/

自活するために息子を他人に託して旅立つ母親と、
他人の子を不本意ながらも抱えてしまったことで
社会復帰し父親になることを決心する男という、
社会から疎外もしくは逸脱したところから始まる
2人の物語が興味深い。
実際、ベルサイユ宮殿に隣接する公園には多数のホームレスが住み、
小さなコミュニティを作っているとのこと。
失業や社会不適応、ホームレスなど、
現代先進国が必ず抱えている社会問題を背景に語られる物語。
フランス映画なので、
もちろんハリウッド的分かりやすい結末は存在しない。
作品はこの3人をただ見つめていく。

この作品に何を感じるかは、
観る人の立場や環境によって変わるだろう。

個人的には、やはり主人公ダミアンを中心に観てしまう。
感情移入するわけではないが、
母親に置いていかれたエンゾの存在が
彼に社会復帰を決心させ、
職に就き、
エンゾを認知してまで学校に通わせようとする、
ダミアンの心情の移ろいに感動する。

と、あれこれ言っても結局は、
エンゾ役のマックス少年がかわいいのである。
けれどエンゾは、ただ可哀想なだけの存在ではない。
彼が抱えている孤独やある種の絶望は、
本作品に登場する誰よりも深い。
だからこそ、
健気で、時にたくましくもあるエンゾから目が離せなくなる。

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