『ウェディング・ベルを鳴らせ!』


エミール・クストリッツァ監督最新作。
黒猫・白猫』をひっくり返してゴタ煮にしたようなドタバタコメディ。
少々やりすぎな気もするが、
もう全編ヒッチャカメッチャカで楽しい。


4月25日 公開
原題「Promets Moi」
監督:エミール・クストリッツァ
出演:ウロシュ・ミロヴァノヴィッチ/マリヤ・ペトロニイェヴィッチ/アレクサンダル・ベルチェック/ミキ・マノイロヴィッチ/リリャナ・ブラゴイェヴィッチ

【ストーリー】
セルビアの山奥で、祖父の手ひとつで育てられた少年ツァーネ。
ある日、「町へ行って牛を売り、次の3つのことを約束しろ」と祖父から命じられる。
1 牛を売ったお金で、聖ニコラスのイコンを買う
2 自分のためのお土産を買う
3 お嫁さんを見つける
約束を果たすため都会へやってきた少年ツァーネは、さっそく可憐な女学生ヤスナに一目惚れし、あの手この手のプロポーズ大作戦!しかし、彼の前に強力な壁が立ちはだかる。それは“セルビア初の世界貿易センタービル”建設を企む新興マフィア。ヤスナの美貌に目をつけたマフィアのボスは、彼女を娼館で働かせようと目論んでいた。
一方、村で帰りを待つ祖父も、唯一の隣人ボサから熱烈に結婚を迫られ・・・
はたしてツァーネはヤスナを悪党の毒牙から守り、村に連れて帰れるのか?
祖父と孫のダブル・ウェディングは実現するのか!?

配給:デスペラード/日活
2007年/セルビア・フランス/127分

公式サイト  http://www.weddingbell.jp/

クストリッツァ作品というと、
『パパは出張中!』や『アンダーグラウンド』のような
政治色の強い作品を思い浮かべるが、
本作品は、ほとんど政治的要素を排除しており、
ストーリー自体はシンプル。
監督によると
「日本の昔話にあるような非常にシンプルな物語を作りたいと思った」
とのこと。

たしかに物語に政治が絡んでこないためシンプルではあるが、
全体的に終始ドタバタしており、
ドタバタのまま猛スピードで突き進んでいくので、
観ている側のテンションが、
そのドタバタに着いていけない時があった。

いや、とても楽しかったんだけどね。
黒猫・白猫』も大好きだし。

でも、クストリッツァ作品を観たことがない人が、
どれほどこのテンションに着いてこられるのだろうか?
と、いらぬ心配もしてしまう。
黒猫・白猫』くらいに全体のバランスがとれていれば、
素直に楽しめるのだけど。

監督は、
前作『ライフ・イズ・ミラクル』のロケ地を気に入って、
その土地を買い取り、
映画学校、宿泊施設、レストラン、スキー場などを擁する自身の村を設立し、
5年前から自身も住んでいるとのこと。
そして、
この田舎生活の中で実感した「人間らしい生活の美しさ」が、
この映画のテーマのひとつになっているとのこと。

このような生活環境に伴う価値観の変化を経ると、
多くの作家は、その作品の方向性も大きく変化する場合がある。
監督の生活環境の変化がなければ、
本作品も生まれなかったことは明白である。
また、これから先のクストリッツァ作品にも大きな影響を与えることも
容易に想像できる。

それでも監督の語る、
「映画とは、脳味噌にポジティブなエネルギーを注ぐことで人々を救うファンタスティックな武器であることを、我々は忘れてはならない」
という基本思想は変わらないであろう。

今後、クストリッツァ作品がどう変化していくのか、
非常に興味深く、楽しみであるのと同時に、
アンダーグラウンド』のような作品も
もう一度観てみたいとも思う。

ウェディング・ベルを鳴らせ! [DVD]

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