『ゼラチンシルバーLOVE』

写真家 繰上和美の初監督作品。


3月7日 公開
監督:繰上和美
出演:永瀬正敏/宮沢りえ/天海祐希/役所広司

【ストーリー】
無機質な部屋から向かいの女をビデオカメラで監視するカメラマンの男(永瀬正敏)。
運河を隔てた無機質な部屋で24時間監視され、ビデオで撮られる美しい女(宮沢りえ)。
無造作に平積された本の列とテーブルが一つ。キッチンにはステンレスの鍋。
男は女を撮り続ける。本を静かに読む女、卵をきっちり12分30秒でゆでる女、卵を食べる女
食べ終えると、着飾り、部屋を出ていく女。
いつしか女に心を奪われていく男−。
男の存在に気づく女−。
交わらないはずの2人の運命は・・・。

配給:ファントム・フィルム
2008年/日本/87分/ビスタサイズ/ドルビーSR
(C)2008オニマクリスプラナ製作委員会

登場人物も少なく、決して難解な物語ではないのだが、
昨今の映画、特に規模の大きな日本映画やアメリカ映画のように、
「説明すること」に親切ではないし、
一見して写真家の作品であることが分かる、
趣向を凝らした画づくりは、
観る人によっては、受け入れられない人もいるだろう。

登場する人物の背景や事情、行動の動機が描かれることはなく、
役名さえ無かったと記憶している。
監督のインタビューによると
「生い立ち、バックグランドを(中略)僕が提示するよりは、
役者さんに考えてもらうことかなと。
芝居をするために、(中略)必要だと思えば考えてもらって想像してもらったらいい」
とのこと。
「物語」自体は、とても切ない話なのだが、
監督は「物語」や「言葉」に興味はない様子。
だから、この作品で「物語」を支えているのは「言葉」ではなく、
役者が演じる人物が「存在している空気」。
もっといえば、
登場人物の置かれている「その瞬間の状況」と「その空間に役者が居る」こと。
それを、写真家である監督独特の視点で切り取り、重ねられていく。

決して間口の広い作品ではなく、
「劇映画」というより「映像作品」としたほうが、しっくりくる。
もちろん繰上和美が「劇映画」として真正面から勝負する必要など全くない。
むしろ本作品のように監督の個人的生理で作られた作品の方が、きちんと「繰上和美作品」になっていて好感がもてる。

あとは「好き」か「嫌い」かだけの問題だ。


ミニパラ http://www.minipara.com/movies2009-1st/silver-love/