『U23D』

いやぁもう、なんというか、ウッキャッキャッキャッて感じでした。
えぇ、意味不明です。
分かっています。

プレスにある
「この映画はU2ファンへのラブレター」
というスタッフの意気込みが全てを語っています。

3月7日 公開
監督:キャサリンオーウェンズ/マーク・ペリントン
出演:ボノ/ジ・エッジ/アダム・クレイトン/ラリー・マレン・ジュニア
3Dデジタル映像プロデューサー:スティーブ・シュクラー

【内容】
照明をおとしたスタジアム。モノクロームの静寂が突如、破られる。逆照明からまばゆいばかりのカラーへ。ラリーのハイハットがカウントを刻む。ジ・エッジのギター、拳を突き上げるボノ・・・。そして沸きあがるファンの歓声、黄金に輝く超満員のスタジアムが大波のように揺れると同時に、観客は1時間25分のパワフルな魂の旅へと誘われる。

配給:ナショナル・ジオグラフィック・エンターテイメント/さらい
2008年/アメリカ/85分
(C)National Geographic

U2のVERTIGOツアーから2006年2月の南米公演をデジタル3D撮影した本作品。
昨今、ハリウッド映画では
『センター・オブ・ジ・アース』や
『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』など
3D映画が何作品か製作されていますが、いずれも未見でした。
てなわけで、デジタル3Dというものを初めて観たのです。

3D映画というと、あの赤と青のメガネをかけて観るイメージしかない世代ですが、
よく考えると、アイマックスとかは当時から3Dだったような気もします。
これまた、観に行ったことがないので分かりません。

で、デジタル3Dですが、
赤と青ではないメガネをかけます。
原理は良く分かりません。
焦点距離の相違で擬似的な立体映像を作り出しているのでしょうが、
そんなことより、メガネが重いです。
普段、自宅ではメガネをかけている私でも、
鼻の上がムズムズして、慣れるまでに時間がかかりました。

肝心の立体映像は、
映像の内容・状況によって驚くほどの効果を発揮することもあれば、
逆に違和感を感じる部分もあり、
まだまだ発展途上の技術のようです。
それでも昔のアナログ3Dに比べれば、
「デジタル技術の脅威」ということでしょうか、
おおっと思わず唸ってしまいます。
けれど哀しいかな、人間の環境適応能力は優秀で、
3曲目あたりからは、余程のことがない限り驚かなくなってしまいました。
結局のところ、全ての技術は、それを使う人間側のセンス次第なんだという
至極当たり前の結論に達したのでした。

撮影はメキシコ、ブラジル、チリ、アルゼンチンで行われており、
メキシコとブラジル公演では、中距離撮影のみ。
チリ公演でステージ上の超至近距離と、客席。
そしてアルゼンチン公演の前日に各メンバーのアップを撮影するためだけに、
観客のいないステージで10曲を別途撮影し、
編集でつないでいるとのこと。

そのことを観る前に知ったせいかもしれないが、
観客のいない映像と、観客のいる映像の「空気」の差がハッキリと分かってしまう。
これは「空気」としか言いようがないのだが、
あえて言えば、
優れたライブや演劇には必ず存在する、
ステージと客席の間に生まれる「力」とか「磁場」とか、
そんな不定形な「何か」。
そして、そんな「何か」こそが、実は一番大切だったりもすると思うのだが、
フレームで切り取られた「映像」だけを信じている「映像作家」の多くは、
そのことに気付いていない人も多い。
だって、何万人という観客の前で行うパフォーマンスの映像と、
観客がいることを想定して行うパフォーマンスの映像がつながるわけがない。

と、否定的なことばかりを並べているが、
U2ファンとしては大変楽しく、充分満足している。
少しでもU2に興味がある人であれば、観て損はしない。
ただし、デジタル3D初のライブ映像であること以外に映画的価値はないので、
U2に興味がないなら、時間の無駄だと思う。

そこで結局、
「この映画はU2ファンへのラブレター」
の一言に帰結してしまうのでした。

最後に蛇足ながら、
撮影が行われた南米公演は全てスタジアムセット。
DVDで発売されているシカゴ公演の、
いわゆる「すだれ」セットではない。
個人的には「すだれ」の方が好きだったので、
せっかくなら「すだれ」セットで観たかった。

ミニパラ http://www.minipara.com/movies2009-1st/u23d/