『チェンジリング』

クリント・イーストウッド監督最新作。 何故イーストウッドは、こうもクオリティの高い作品を、こうも短いインターバルで作り続けることができるのだろうか。 とても不思議でならない。
1928年に起きた事件を忠実に描いた作品とのことだが、映画作品としての物語もきちんと描かれていて良い。
上映時間も142分と長い上、とても重い内容であるにも関わらず、一気に見せるイーストウッドの手腕に改めて、感心する。 物語の主軸は、アンジェリーナ・ジョリー演じる主人公の愛と勇気の物語で、彼女の置かれる状況もキビシイが、本作品に登場する子供たちの状況もキビシく辛い。 主人公の息子はもちろん、物語を大きく進展させる農場の少年や、終盤に登場する少年など、彼らの抱える絶望の深さは計り知れず、観ていて心臓が痛くなる。
現在のアメリカの「良心」を代表する文化人として、クリント・イーストウッド以外で、アメリカの識者たちが胸を張って名前を挙げることができる人物がどれほどいるだろうか。 ずいぶんな極論だが、それほど現在のイーストウッドのポジションは希有だと思う。 1990年代、ケビン・コスナートム・ハンクスは、その出演作品でアメリカの負の歴史に、 一点の美談を描き、愛と勇気の物語に昇華させることで、アメリカの「良心」を体現した。 きっと個人的な偏見だと思うのだが、 この二人には、どこかで胡散臭さを感じていた。 「私がアメリカの『良心』です」的な雰囲気が嫌いだった。 けれど、クリント・イーストウッドの立ち位置は少し違うように思える。 1970年代から自身の監督作品を製作し続けた先の円熟期が醸し出す余裕なのか、 それとも、あの微妙に貧乏くさい顔が、お金の臭いを消しているのか・・・。
いずれにせよ、イーストウッドの作品は無条件で観続けようと思う。


2月20日 公開
原題「CHANGELING」
監督:クリント・イーストウッド
出演:アンジェリーナ・ジョリー/ガトリン・グリフィス/ジョン・マルコヴィッチ

【ストーリー】
クリスティンは、ロサンゼルスの郊外で暮らすシングル・マザー。
だが、彼女の幸福な日々は、ある日唐突に終わりを告げる。
1928年3月10日、クリスティンの勤務中に、家で留守番をしていたウォルターが失踪。
クリスティンは幾晩も眠れない夜を過ごす。
そんな彼女の元に、ウォルターがイリノイ州で見つかったという朗報がもたらされたのは、5ヶ月後のことだった。
マスコミの注目の中で行われた感激の母子対面の儀式。
だが、クリスティンの前に現れたのは、最愛のウォルターではなく、ウォルターに顔だちがよく似た見知らぬ少年だった。
「これは息子じゃない」と、担当の刑事に訴えるクリスティン。
しかし、警察の功績をマスコミにアピールすることにしか関心のない刑事は、少年を無理やりクリスティンに引き取らせたあげく、抗議の声を上げる彼女を精神病院に監禁してしまう。
「なんとしても本物の息子を取り戻したい。戻ってきた我が子を、この胸に抱きしめたい」
ただその思いだけを胸に、クリスティンは、拷問にも等しい精神病院の生活に耐え、人違いの事実を認めようとしない警察に「息子を探してくれ」と訴え続ける。

配給:東宝東和
2008年/アメリカ/142分/シネマスコープ/ドルビーSR
(C)2008 UNIVERSAL STUDIOS. All Righta Reserved.

ミニパラ http://www.minipara.com/movies2009-1st/changeling/