『キャラメル』

レバノン映画である。 フランス合作だけど・・・。 レバノン映画なんて、たぶん初めて観たと思う。
正直、世界地図でレバノンを指せと言われても自身がないし、レバノンとかベイルートとか聞くと内戦の印象しかないが、本作品中に戦争に関する描写は一切ない。
監督は、脚本・主演を兼任するナディーン・ラバキー。 彼女以外の出演者はほとんどが演技経験のない素人とのこと。それでも皆きちんと「役者」で、ちょっとびっくりする。 映像も、光の加減とセットや衣装の色使いが綺麗で、編集も上手い。
監督のインタビューには、内戦という過去にとらわれず未来を描きたかったとあるが、撮影後の2006年夏に起きた再度の内戦を経て、本作品は完成している。監督は続けて、「(結果として)『キャラメル』は別の方法で戦争を生き抜く、そして戦争を終わらせる、戦争に対する仕返しだ」と語る。 戦争描写の全くない反戦映画。 内戦が終わった2007年、本作品はレバノンで異例の6ヶ月ロングラン上映されたそうだ。 ありとあらゆる宗教が混在しているレバノンで、内戦を経験した直後の人々が、どういう気持ちで本作品を受け入れたのかを想像すると、複雑な気持ちにもなる。
とはいえ、そんな背景事情を完全に無視して観ても、充分すぎるくらい魅力的で幸福な作品。 本作はその冒頭から、心臓をギュッとつかんで離してくれませんでした。


1月31日 公開
原題:CARAMEL
監督:ナディーン・ラバキー
出演:ナディーン・ラバキー/ヤスミーン・アル=マスリー/ジョアンナ・ムカルゼル/ジゼル・アウワード/アーデル・カラム/シハーム・ハッダード
プロデューサー:アンヌ=ドミニク・トゥーサン
脚本:ナディーン・ラバキー/ジハード・ホジェイリー/ロドニー・アル=ハッダード
撮影:イヴ・サフナーウィー
美術:シンシア・ザッハール
音楽:ハーレド・ムザンナル
衣装:キャロリン・ラバキー

【ストーリー】
ベイルートの小さなエステサロンに集う5人の女性たち。彼女たちは誰にもいえない秘密を抱えていた…。結婚を前にフィアンセに過去を打ち明けられないイスラム教徒のニスリン。不倫の恋に振り回されるオーナーのラヤール。長い髪の美しい顧客に心惹かれるリマ。毎日サロンに通うジャマルは、年を重ねる自分を受け入れられない。ローズは年老いた姉を抱え、すでに自分の人生を諦めていた。そして、ニスリンの結婚式を前にそれぞれの人生が動き始める…。

配給:セテラ・インターナショナル
2007年/レバノン・フランス/96分/35mm/ドルビーSRD

ミニパラ http://www.minipara.com/movies2008-4th/caramel/

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