『大阪ハムレット』

可もあり不可もある作品。
森下裕美の同名漫画の映画化。「大阪ハムレット」「乙女の祈り」「恋愛」のそれぞれの主人公を三兄弟として「大阪ハムレット」に集約している。
三兄弟を演じている若い俳優たちが良い。特に次男で「大阪ハムレット」の主人公を演じる森田直之がイイ。この「大阪ハムレット」のエピソードだけで、観て損はしない。
ただ、設定を三兄弟に変えていることで、「恋愛」の主人公が長男になってしまい、後半の展開に苦労しただろう跡が見える。ま、無難な選択なのだろうが、「恋愛」のエピソードに関しては原作の方が好きだった。
ただし、作品全般としては非常に中途半端であり、もう少し作品として昇華できなかったのだろうかと、不満も多く残る。タイトルの出し方も訳が分からないし、物語の節々が空回りしている。途中までは上手く物語を進めているのに、後半からラストにかけて、広げた風呂敷の畳方がつまらない。
また、試写での画質が悪く、まるでビデオからフィルムに起こしたようなアナログノイズがあって、気になった。試写に間に合わせるための画質低下であれば良いのだが、あれが正式な映像であるなら、何の目的があってこのような映像になってしまったのだろうか。撮影に関する不満も多く、非常に残念でならない。

1月17日 公開
監督:光石富士朗
出演:松坂慶子/岸部一徳/森田直幸/久野雅弘/大塚智哉/加藤夏希/白川和子/本上まなみ/間寛平
原作:森下裕美大阪ハムレット」(双葉社刊/「漫画アクション」連載作品)

【ストーリー】
 大阪の下町で暮らす久保家。3人の息子を抱え、一家の大黒柱となっているのは、働き者のお母ちゃん、房子(松坂慶子)だ。お父ちゃん(間寛平)が突然亡くなり、四十九日も済まないうちに、お父ちゃんの弟と名乗る叔父さん(岸部一徳)が転がり込んでくる…が、なぜかすんなりと受け入れる天真爛漫でのんきな房子。こうして5人の奇妙な家族生活が始まる。
 中3なのに見た目は大学生みたいに老けている長男・政司(久野雅弘)は、道で偶然出会った大学生、由加(加藤夏希)が、側溝に落ちそうになるのを救ったことをきっかけに、恋人同士に。年齢を隠して、デートを重ねていく。「私のお父ちゃんになってもらいたい」と言われて戸惑うも、愛する彼女の思いを優しく受け止める政司。
 一方、やんちゃな中1の次男・行雄(森田直幸)は、学校で担任教師から、「久保くんはハムレットやなぁ」と言われ、その理由を知るため、辞書を片手にシェイクスピアの「ハムレット」を読み始める。そして、「ハムレットのお父ちゃんの弟が、兄ちゃん殺してお母ちゃんたらし込んで王様になった」と知った行雄は、「ワシの家もハムレットのとこと一緒や言うんかい」と、怒り心頭。だが、ふと自分の顔がまったくお父ちゃんに似ていないことに気づき、自分は果たして誰の子かと疑問に思う。さらに、お母ちゃんが誰かの子を妊娠していると知り、悩みは深まるばかり…。
 三男の宏基(大塚智哉)は小学校で「女の子になりたい」と言い、クラスメイトにからかわれてしまう。傷心を慰めてくれたのは、お母ちゃんの妹で、病気で入院中のあき(本上まなみ)だったが、あきはほどなくして、この世を去ってしまう。学芸会の演目が、「シンデレラ」に決まり、宏基は周りに推薦され、シンデレラを演じることに。あきの服をお母ちゃんに仕立て直してもらって衣裳にすることにし、張り切る宏基だが、周りに冷やかされ心が折れそうに…。
 さて、宏基の発表会の日がやってきた。久保家の5人は揃って家を出る。不器用でも、生きることに一生懸命な三兄弟は、それぞれの悩みを

配給:アートポート
2008年/日本/107分/カラー/35mm/ビスタサイズ/DTS STEREO
(C)2008「大阪ハムレット」製作委員会

大阪ハムレット デラックス版 [DVD]

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