『ワンダーラスト』

マドンナの初監督作品。これが意外なほど面白かった。
もっと派手でソツなく作られた作品かと思っていたが、全く違っていた。ハリウッド・メジャースタジオとは一切無縁な小さな規模で製作された本作品。名前だけの監督ではなく、ビックリするくらいキチンと、マドンナの作品になっている。
言動や見た目の派手さばかりが目立つマドンナだが、とても真面目で、作品に対してはストイックなマドンナ。でも必要以上にポジティブだったりするその主張の強さが、少し胡散臭かったりもするマドンナ。本作品はそんな、まぎれもないマドンナ作品。
原題は「FILTH AND WISDOM」、「堕落と知恵」と訳されている。堕落と知恵の両方を持っているのが人間で、絶望などの負を知るからこそ正を見つけることができる、と作品は語る。
主人公3人それぞれにマドンナ自身が投影されていることは明らかで、作品の全てがマドンナの中から生み出されていることが分かる。私論として、映画は「個人的」であるべきだと思っているのだが、本作品もまた、「個人の熱狂」を内包した作品。
この先マドンナが、もう少し規模の大きな作品を作ることはあっても、商業主義だけのハリウッド大作を監督することはないだろう。だからこれからもマドンナ作品は観つづけようと思う。


1月17日 公開
原題「FILTH AND WISDOM」
監督:マドンナ
出演:ユージン・ハッツ/ホリー・ウェストン/ヴィッキー・マクルア/リチャード・E・グラント/インダー・マノチャ/エリオット・レヴィ/フランチェスカ・キングドン/スティーブン・グラハム/ハンナ・ウォルターズ/ショーブ・カプール/エイド

【ストーリー】
 ウクライナ移民のAKの夢は、ミュージシャンとして成功することだ。ジプシーパンクバンド"ゴーゴル・ボルデロ"のフロントマンであり、詩人であり、哲学者でもある彼は、SMの調教師をして生計を立てている。軍人、教師、騎手、マーガレット・サッチャーなど様々なキャラクターに扮装して顧客の歪んだ欲望を満たすこの仕事は、あくまでお金を稼ぐ手段でしかない。とはいえ、AKはプレイの準備と内容をまじめにこなし、時にはルームメイトの2人に手伝ってもらうこともある。
 ルームメイトのひとりで、AKが密かに恋心を寄せるホリーは、長年バレエに打ち込んできたが、ロイヤル・バレエ団で踊る日はやって来そうにない。家賃を払えなくなった彼女は、AKの提案により、その「宝物がつまった体」を使って生計を立てることを決意し、ストリップクラブのポールダンサーのオーディションを受ける。渋々飛び込んだポールダンスの世界は想像以上に厳しくかつ深く、ホリーは先輩ダンサーのフランシーヌの指導のもとで練習に没頭していく。そして同時に、男のボスのあしらい方といった仕事のコツもおぼえていくのだった。

配給:ヘキサゴン・ピクチャーズ
2008年/イギリス/84分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
(C)2007 Semtex Films

ワンダーラスト マドンナ初監督作品 [DVD]

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