『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』

マドンナの劇場用長編二作目は、英国王エドワードとその妻ウォリスの物語を、現代(1998年)に生きる女性ウォリーを媒介にして描いてゆく。アメリカ公開時のあまりの不評ぶりにどんなものかと思っていたけれど、果たして思いのほか楽しんで観ることができた。
20世紀最大のスキャンダルとの呼ばれるウォリス(W.)とエドワード(E.)の恋。そのロマンスを夢想し傾倒してゆく主人公ウォリーは彼らの物語を追うにしたがい、二人がそのロマンスと引き換えに多くの犠牲を払っていたことを知り、やがてはウォリー自身の人生にも変化を与えてゆく。そんなウォリスとウォリーの物語が交互に描かれる。
ほぼ全編で流れつづける音楽が素晴らしく、後になって冷静に考えてみると劇伴に感情の大部分を持っていかれたようにも思える。音楽を手がけるのはアベル・コジェニオウスキ。トム・フォードの初監督作『シングルマン』(2010)も担当している。ちなみに今作品でアカデミー賞の衣装デザイン賞にノミネートされたアリアンヌ・フィリップスも『シングルマン』に参加しており、マドンナとは10年以上の仕事仲間だとか。
さらに強く印象に残るのは、ややトリッキーにも思える撮影と編集である。全般を通して時にはピントが合っていないカットもあるほどに被写界深度の浅い映像を重ね、そこに大胆なクロースアップカットが登場人物の感情や劇伴に合わせて細かくインサートされてゆく。どうやら35mmフィルムでの撮影をベースに、必要に応じて16mmや場面によってはスーパー8でも撮影を行って織り交ぜているとのこと。物語を丁寧に紡いでゆくには少しせわしない編集だが、現代を生きるウォリーと世界から嫌われたウォリス、二人の“W.”の孤独と苦悩の物語を描くには必要な手法だったのだろう。でもたまに理解不能なカメラワークもあるのだけれど。
マドンナの長編デビュー作『ワンダーラスト』は、それ以上ないくらいに“マドンナ”の作品で好きな作品だった。そして今作品も『ワンダーラスト』ほど端的ではないけれど、それでもやはり“マドンナ”作品だと感じられる。物語の語り口など中途半端に思える部分も多く残るが、個人的には好きと言える作品。


11月3日 公開
原題:W.E.
監督・脚本・製作:マドンナ
出演:アビー・コーニッシュ/アンドレア・ライズブロー/ジェームズ・ダーシー/オスカー・アイザック/デヴィッド・ハーバー/ジェームズ・フォックス/ジュディ・パフィット/ハルク・ビルギナー/ジェフリー・パーマー/ナタリー・ドーマー/ローレンス・フォックス
脚本:クリス・サイキエル 撮影:ハーゲン・ボグダンスキー プロダクションデザイン:マーティン・チャイルズ 編集:ダニー・B・タル 衣装デザイン:アリアンヌ・フィリップス 音楽:アベル・コジェニオウスキ

【ストーリー】
1998年、ニューヨーク。一流分析医の夫と、誰もが羨む暮らしを送るウォーリーには、人知れぬ悩みがあった。結婚して6年。ウォーリーは妊娠を望むも夫は非協力的な態度であるばかりか、毎夜仕事を理由に家を空けている。やり場のない気持ちをかかえていたウォーリーは、ある日、“王冠をかけた恋”で知られる英国王エドワード8世とその妻ウォリス・シンプソンの遺品オークション展覧会を訪れる。そこでウォーリーは2人の愛の結晶ともいえる数々の芸術品に魅了され、国王の心をつかんだアメリカ人女性ウォリスの愛の物語に心惹かれていく。しかし、世紀の恋を生き、すべてを手に入れたと思われていたウォリスにも、知られざる苦悩があった。

配給:クロックワークス
2011年/イギリス/119分/カラー・モノクロ/シネマスコープ/ドルビーSRD/字幕翻訳:古田由紀子
(C)2011 W.E.COMMISSIONING COMPANY LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.

公式サイト http://we-movie.net

ミニパラ http://www.minipara.com/movies2012-4th/we/

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