『この空の花 −長岡花火物語』

大林宣彦監督最新作は新潟県長岡市を舞台にした過去と現在を紡いで未来へつなげてゆく物語。太平洋戦争での空襲と中越地震で亡くなった人たちのために打ち上げられる花火を軸にして語られる史実や事実を基にした物語を、劇中で謎の女子高生が書いた戯曲『まだ戦争には間に合う』の上演に乗せて、主人公となる長岡に導かれた旅人・玲子を中心に描いてゆく。
多くのクリエイターがそうであるように東日本大震災の後で作品をどう発表してゆくかを模索して、それが大小表裏を問わず確実に作品へ影響を及ぼしている中で、この映画も例外ではなく、大林宣彦作品としても少し変わった位置付けになっている。強いて挙げれば『北京的西瓜』に近いのかもしれないが同系列には置けずにいる。
それでもこの映画は半ばドキュメンタリー的手法を交えながらも史実に大林宣彦的ウソを織り込んで、主人公が旅する長岡を時間軸を越えたワンダーランドに仕立て上げていて、結果として大林ワールド全開な映画となっている。年齢と共にその独特な映画世界観に磨きのかかる大林ワールドには好き嫌いあるだろうし、殊に近年その傾向は増しているだろう。でも個人的には今も昔も大林宣彦作品は大好きで、大林宣彦の映画的ウソに随伴する“かなしみ”も大好物である。


5月12日 公開
監督:大林宣彦
出演:松雪泰子/高嶋政宏/原田夏希/猪股南/柄本明/富司純子
脚本:長谷川孝治/大林宣彦
主題曲:久石譲
主題歌:伊勢正三
撮影:加藤雄大/三本木久城/星貴
編集:三本木久城/大林宣彦

【ストーリー】
天草の地方紙記者・遠藤玲子が長岡を訪れたことには幾つかの理由があった。ひとつは中越地震の体験を経て、2011年3月11日に起きた東日本大震災に於いていち早く被災者を受け入れた長岡市を新聞記者として見詰めること。そしてもうひとつは、何年も音信が途絶えていたかつての恋人・片山健一からふいに届いた手紙に心惹かれたこと。山古志から届いた片山の手紙には、自分が教師を勤める高校で女子高生・元木花が書いた『まだ戦争には間に合う』という舞台を上演するので玲子に観て欲しいと書いてあり、更に「長岡の花火を見て欲しい、長岡の花火はお祭りじゃない、空襲や地震で亡くなった人たちへの追悼の花火、復興への祈りの花火なんだ」という結びの言葉が強く胸に染み、導かれるように訪れたのだ。こうして2011年夏。長岡を旅する玲子は行く先々で出逢う人々と、数々の不思議な体験を重ねてゆく。そしてその不思議な体験のほとんどが、実際に起きた長岡の歴史と織り合わさっているのだと理解したとき、物語は過去、現在、未来へと時をまたぎ、誰も体験したことのない世界へと紡がれてゆく!

配給:TME/PSC
2011年/日本/160分/カラー/アメリカンビスタ
PSC (C) 2011

公式サイト http://konosoranohana.jp/

ミニパラ http://www.minipara.com/movies2012-2nd/konosoranohana/

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