『アジャストメント』

マット・デイモン主演のユニバーサル映画というと「ジェイソン・ボーン」シリーズというイメージで、一般的にもスタジオ的にもすでに固着していると思われるが、不勉強ながらこのシリーズは観たことないし、続く『グリーン・ゾーン』も観ていない。しかも本作品が監督デビュー作となるジョージ・ノルフィは『ボーン・アルティメイタム』で共同脚本を努めていたとのこと。もうこの時点でかなりの門外漢なわけだが、撮影監督のジョン・トールや音楽のトーマス・ニューマンは好きなので、その辺を頼りにして観た。果たして、マット・ユニバーサル・デイモンに迎合できず、撮影も音楽も特筆することのない作品でした。
原作はフリップ・K・ディックの短編小説「調整班」。確かにSF設定の作品なのだけれど、映画全体としては主人公デヴィッドとヒロインであるエリースのラブロマンス色の方が強い作品だった。もちろん設定ありきのハードなSF映画に徹する必要などないけれど、ちょっとロマンス側に寄りすぎているように思える。そもそも原作小説とは全く違う物語のようで、原作の基本設定だけが残っている様子。
もう一つ気になったのは、劇中で運命を操作する「運命調整局」員たちの正体。この設定は原作小説とも大きくは違わないようだが、個人的に「それはちょっと…」な内容でした。確かに古典SFの一要素として成立していることの多い設定ではあるけれど、こんなにも物語の前面に出てきたらファンタジーにしかならないのではないだろうか。
自身のアイデンティティ回復のために大きな組織へ立ち向かってゆく主人公を演じるマット・デイモンの活躍は「ジェイソン・ボーン」シリーズのファンであれば楽しめるかもしれない。けれどフリップ・K・ディックのファンやSF設定に惹かれて観ると期待外れになるかもしれない。気楽に観られるデートムービーとしては及第点か?


5月27日 公開
原題「THE ADJUSTMENT BUREAU」
監督:ジョージ・ノルフィ
出演:マット・デイモン/エミリー・ブラント/テレンス・スタンプ/アンソニー・マッキー/ジョン・スラッテリー/マイケル・ケリー

【ストーリー】
将来有望な若手政治家デヴィッド(マット・デイモン)は、ある日エリース(エミリー・ブラント)という美しいバレリーナと“運命的”に出逢い、一目惚れする。
しかし次の瞬間、突如現れた“アジャストメント・ビューロー(運命調整局)”と呼ばれる男たちによって、彼は拉致されてしまう。
彼らの目的は、本来“恋に落ちる予定ではなかった”デヴィッドとエリースを引き離し、“運命の書”に記述された運命に従わせること。混乱するデヴィッドに突き付けられたのは、「この世のすべての運命は、ビューローがすでに決めた運命から逸脱しないよう常にモニターされ、操作されている」という、信じがたい現実の“裏側”だった。
超人的な能力で運命を操作する彼らに対し、愛する女性と再会するべく必死の抵抗を試みるデヴィッド。彼はやがて、ビューローの真の目的と、その背後に潜む更に巨大な力の存在に気付き始める…。

配給:東宝東和
2010年/アメリカ/106分/ビスタ・サイズ/ドルビーSRD/字幕翻訳:栗原とみ子
(C)2010 UNIVERSAL. STUDIOS

公式サイト http://adjustment-movie.jp/

ミニパラ http://www.minipara.com/movies2011-2nd/adjustment/

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