『人生万歳!』
ウッディ・アレン監督作品としては通算40作品目となる本作品。この数年の作品も好きだけれど、この作品の面白さはダントツ。それもそのはずで、本作品の脚本は1970年代半ばに書かれたものを書き直したものとのこと。当時ゼロ・モステル*1のために書き下ろした脚本だったが、1977年にモステルが他界したことで企画自体がお蔵になってしまい、以降ウッディ・アレンの机の中で眠っていたものらしい。なので『アニー・ホール (1977)』や『マンハッタン (1979)』などの1970年代を代表する名作たちに通じる空気をこの作品の中に感じられることはウディ・アレン作品ファンとしては嬉しい。たとえそれがファンの勝手な解釈だとしてもだ。
12月11日 公開
原題「Whatever Works」
監督・脚本:ウディ・アレン
出演:ラリー・デヴィッド/エヴァン・レイチェル・ウッド/パトリシア・クラークソン/エド・ベグリーJr./ヘンリー・カヴィル【ストーリー】
ボリス(ラリー・デヴィッド)は、かつてはノーベル賞候補になりながら、今ではすっかり落ちぶれてしまった物理学者。ある夜、アパートに帰ろうとしたボリスは、南部の田舎町から家出してきた若い女性、メロディー(エヴァン・レイチェル・ウッド)に声をかけられる。寒さで凍える彼女を気の毒に思ったボリスは、数晩だけという約束で泊めてやることにする。
ところが、世間知らずのメロディーは、冴えない中年男のボリスと暮らすうちに、彼こそは"運命の相手"だとすっかり勘違いしてしまう。そのうえ、愛する娘の後を追って、メロディーの両親が相次いで上京したことから、事態はますますややこしいことに…年齢も知能指数もかけ離れた2人の"ありえない"恋愛の行方は、果たしていかに!?配給:アルバトロス・フィルム
2009年/アメリカ/91分/ビスタサイズ/SDDS/PG-12
(C) 2009 GRAVIER PRODUCTIONS, INC
まず何といっても、主演のラリー・デヴィッドが良い。スダンダップ・コメディアンらしいが本作品まで彼のことは知らなかった。1990年代にテレビコメディ・シリーズ『となりのサインフェルド (1989−1998)』をジェリー・サインフェルドと共に企画し脚本も書いていたとのこと。ウディ・アレンの分身を担っているとも言われているが、ウディ・アレンが自作で演じている多くの役柄よりも他人に対して少し偉そうで、演じている役者によってはかなり厭味なキャラクターになってしまいそうだが、ラリー・デヴィッドによっていい具合に憎めないキャラクターとして成立していることがこの作品の最大の成功要素でもあろう。もちろん共演者となるエヴァン・レイチェル・ウッドの絵に描いたような「家出してきた南部の田舎娘」役も良い感じだし、その他の共演者たちも素晴らしく、全体的に申し分のないキャスティングとなっている。
物語展開について少しでも踏み込んでしまうとネタバレになってしまいそうなので自重するが、本作品も多くのウディ・アレン作品と同様に物語のほとんどを「偶然」が進めてゆくことになる。あらゆる偶然が重なって登場人物たちの人生が左右されてゆく様をユーモラスに描きあげるストーリーテリングの手腕はさすがで観客を決して飽きさせることがない。もちろん「出来すぎ」な物語展開ではあるけれど、それがウディ・アレン作品なのだから文句を言うことは筋違いだろう。「人生はいつも、いきなりドラマチックになるのよ。それを、作家は分かりやすく解説しているだけなのよ」という鴻上尚史戯曲のセリフを思い出す。そしてもうひとつ、物語の最初と最後で劇中世界から唐突に主人公がカメラに向かって語りかけてくるだけでなく、その向こう側にいる観客をも揶揄する、このあたりの演出も演劇的でとてもウディ・アレン作品らしくて楽しい。
ウディ・アレンの監督40作品目は、非常にウェルメイドで少しスパイスの効いた、幸せな人生についての物語でした。
ミニパラ http://www.minipara.com/movies2010-4th/jinsei-banzai/
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