『リトル・ランボーズ』

数多くのミュージックビデオを手がけた後『銀河ヒッチハイク・ガイド』で劇場映画監督デビューしたガース・ジェニングスによる二作目。ガース・ジェニングスは子供のころ実際に映画『ランボー(原題:FIRST BLOOD)』を真似て友達同士でホームムービーを作っていたとのこと。本作品はその実体験をベースにして書かれた作品でありオリジナル作品としては初めての作品となる。前作に比べればはるかに規模の小さな作品で、一応インディペンデントの部類に入るらしい。そのインディペンデント作品が2007年サンダンス映画祭での上映をきっかけにして世界公開へと発展したとのこと。
何よりも主人公となる少年二人が素晴らしい。二人とも演技未経験らしいが、この二人のやりとりを見ているだけで楽しいし、本作品を観る価値は充分にあると思う。


11月6日 公開
原題「SON OF RAMBOW」
監督:ガース・ジェニングス
出演:ビル・ミルナー/ウィル・ポールター/ジュール・シトリュク/ジェシカ・スティーヴンソン/ニール・ダッジオン/エド・ウェストウィック/アンナ・ウィング/エリック・サイクス

【ストーリー】
11歳のウィルは教会の厳しい規律のもと、音楽や映画、TVなど同世代の子供たちが夢中になっているものを禁止されて暮らしている。そんなある日、ウィルは学校きっての問題児で、いろんな悪さを平気で働くカーターと出会う。そして老人ホームを営むカーターの自宅で、生まれて初めて観た一本の映画−『ランボー』に、ウィルは人生最初で最高の衝撃を受ける。そして僕らもこんな映画を作りたい!そんな気持ちで結ばれた二人は、お手製の映画作りを通じて友情を深めていく・・・。

配給:スタイルジャム
2007年/英国=フランス/94分/カラー/シネマスコープ/ドルビーSRD
(C)Hammer & Tongs, Celluloid Dream, Arte France, Network Movie, Reason Pictures

公式サイト http://rambows.jp/

監督ガース・ジェニングスの幼少期にあたる1980年代前半のイギリス田舎町を舞台としており、監督曰く「天真爛漫な子供たちの視点で、エキサイティングな体験に身を投じる喜びを描いた」本作品は、鑑賞前に思っていたよりもドタバタコメディに近い要素も多い。
主人公の少年が現実世界に空想世界を上書きしてゆく感覚は大好きなのだが、ドタバタコメディであることを盾にして若干やりすぎな描写も随所に見受けられ、教師が怪我するところなどは本当に酷くて正直興醒めしてしまう。また分かりやすくなるからという理由だけで加えられた主人公一家が「プリマス同胞教会」教徒であるという設定も、特に活かされることなく表層的な描写だけに終わってしまっていて、わざわざそんな特異な設定を加える必然性が何もない。他にもフランスから交換留学生が数十人と訪れるのだが、物語に深く関わってくるのはそのうちの一人だけで、他の留学生は最初と最後しか登場しない。であれば彼らは必要ないだろうとも思うし、むしろ彼らが物語に関わってこないことの方が不自然でもある。実はラストにその理由を思わせる描写もあるのだけれど、この件に限らず各エピソードの顛末を笑いネタのオチのごとく「どう?小洒落ているでしょ」とでも言いたげに描いてゆくのだが、そのほとんどが無意味。まるでチャンチャンという効果音でも聞こえてきそうなほど軽く扱っていて、それだけのためにラスト近くまでそのネタを引っ張るのかと驚きもする。
原題「SON OF RAMBOW」にもどうでも良いオチが用意されているのだが、わざわざタイトルまで「SON OF RAMBOW」とする意図がよく分からない。英語もしくはイギリス文化の中で何か意味があるのかもしれないが、少し調べただけでは分からなかった。さらになぜか日本語タイトルでは『〜ランボーズ』と複数形になっている。ウィルとカーターの二人を中心とした物語ではあるけれど、製作する自主映画でランボーの息子を名乗るのはウィルだけで、カーターは大佐役だ。
ストーリーや宣伝用スチールなどから個人的に想像していたようなノスタルジー感と子供の持つ奔放さや世界と遊ぶことのワクワク感、その後に直面するであろう社会に対して無力であるという現実と感傷。言葉にしてしまうとその通りの作品なのだけれど、本作品が描いている物語世界はあまりにも表層的に感じられてしまい、個々のエピソードもピース同士が巧くハマっておらず隙間が多い。「もったいない」の一言に尽きる。主演の二人があまりにも良かっただけに、なおさらである。


ミニパラ http://www.minipara.com/movies2010-4th/rambows/

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