『宇宙ショーへようこそ』

監督　舛成孝二の初劇場用長編作品とのこと。けれど本作品まで舛成孝二という方を知りませんでした。代表作となる『R.O.D』シリーズや『かみちゅ！』もタイトルは知っていても観たことはない。そんな前提で鑑賞した本作品、いろいろと気になるところはあるけれど「まあ面白かった」というのが第一印象でした。

6月26日 公開
監督：舛成孝二
声の出演：黒沢ともよ/生月歩花/吉永拓斗/松元環季/鵜澤正太郎/藤原啓治

【ストーリー】
美しい自然に囲まれた小さな村、村川村。小学校の生徒はわずか5人。毎年恒例のこどもだけで行う夏合宿の初日、夏紀たちは裏山で傷ついた犬を見つけた。手当てをしてやると…
「ありがとう。おかげで助かりました」
「！」
なんと、彼、ポチ・リックマンは犬ではなく、遥か2100 万光年先にある惑星プラネット・ワンからやって来た宇宙人だったのだ。礼をしたいというポチの案内で、夏紀たちは月に行くことに。宇宙一の人気TV 番組『宇宙ショー』を見るなど、5人は月での観光を満喫する。しかし、ポチの口からは意外な一言が。
「事情が変わった…地球へ帰れなくなった」
「ええーっ!?」
夏合宿が終わるまであと一週間。怪しい宇宙人にも狙われるなか、夏紀たちは無事地球へ帰れるのか？

配給：アニプレックス
2010年/日本/136分/
(C)A-1 Pictures／「宇宙ショーへようこそ」製作委員会

公式サイト　http://www.uchushow.net/

作品全体を通して映像がキレイで丁寧に描き込まれているため、映像面で破綻したりすることがなく安心して観ることができた。ストーリーの進行に従って主人公たちが移動してゆく物語上の舞台が大きく分けて４カ所あり、それぞれのデザインを４人の違うプロダクションデザイナーが担当している。そのため物語舞台ごとに世界イメージがきちんと変わっていて楽しい。また主人公となる少年少女５人の声を設定年齢に近い子供たちが演じているため他の役を演じるプロの声優たちとのバランスが心配だったが、思っていたほどの違和感はなかった。なので映像と音声に関してはほぼストレスなく観ることができる。
けれど、ストーリー部分で気になってしまうところが多々あった。全体としては「少年少女たちの夏休みSF冒険物語」の王道である。たまたま救った宇宙人からの好意で宇宙旅行をしたら帰れなくなり、奇しくも全宇宙の命運を分ける大事件に巻き込まれてしまう。その過程で少年少女たちが成長し、結果として宇宙も救ってしまうという、平たく言えば「映画　ドラえもん」なのである。もちろん「映画　ドラえもん」であることは構わないのだけれど、本作品の場合は本筋から少し外れた周辺エピソードを詰め込み過ぎな感が否めない。その結果として物語の本筋で説明不足になってしまっている部分があるように思える。
また個人的には、悪役となる古代植物ズガーンを狙う密猟団のボスについてもう少しドラマを盛り込んで欲しかった。このボスのドラマが物語の中心にあって、その過程で主人公たちが成長していった方が「お話し」として面白いと思うのだけれど。この作品の場合、物語の中心は「少年少女たちの成長」になっていて、密猟団のボスのドラマについては一応の説明程度にしか語られていない。もちろんシリーズ作品ではないので主人公たちのドラマを語らなくてはならないことも理解できる。けれど主人公５人それぞれのドラマを多かれ少なかれ取り入れながら全宇宙を巻き込む大事件を１本のアニメ映画の中で語ることには、どうしても無理が生じてしまう。実際、全年齢を対象としたアニメ映画としては長尺の136分という上映時間を費やしても、まだ足りないのである。
あとは何と言っても、古代植物ズガーンを「アレ」に設定した以上、もっと大儀となる物語があったはずなのに、これに関しては完全にスポイルされてしまっている。であればそんな設定をあえて残しておく必要性は全くないと思うのだけれど。他にも設定はされていたのだろうけれど回収されない伏線があちこちに見受けられるし、そもそもタイトルにも疑問が残る。
と、いろいろと文句もあるが、脳味噌を使わない娯楽作品としては楽しむことのできる映画になっていると思う。監督も「この映画を観て欲しいのは、子どもたちと、むかし子どもだった人たち」だと語っている。「大人の皆さんも、出きれば何も考えずに、毎日すべてが新しい経験だったあの頃に戻って（中略）楽しんでください」と。対象を完全に「子ども」に絞っていれば物語としての薄さは許されるとでも思っているようなコメントにも納得しきれない部分が残ってしまうが、監督がそう言うのであれば仕方ないし、コレでよいのかもしれないとも思う。

ミニパラ http://www.minipara.com/movies2010-2nd/uchushow/

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