『ダブル・ミッション』

ジャッキー・チェンのハリウッド進出30周年記念作品、とのこと。いったい出演作品が何本になるのか数える気にもならないジャッキー・チェン映画だが、個人的にはあまり観ない種類の映画であるため、これまでの鑑賞本数も数える程度しかない。そんな私でも「ジャッキー・チェン映画」というジャンル・ムービーとして存分に楽しむことができるということが素晴らしい。ちなみにハリウッド進出第一作は1980年『バトルクリーク・ブロー』とのことですが、タイトルさえも知りませんでした。


6月19日 公開
原題「THE SPY NEXT DOOR」
監督:ブライアン・レヴァント
出演:ジャッキー・チェン/アンバー・ヴァレッタ/マデリン・キャロル/ウィル・シャドレイ/マリーナ・フォーリー/ビリー・レイ・サイラス/ジョージ・ロペス

【ストーリー】
ジャッキー扮するボブは、表の顔は冴えないペンのセールスマン、しかし裏の顔は敏腕のCIAエージェントという2つの顔を持った男だが、好きな女性との結婚を考えCIAエージェントからの引退を決意する。ある日、結婚相手の3人の子供たちの面倒を見ることを頼まれる。ところが子供の1人が偶然にもボブのパソコンからロシア当局の秘密データをダウンロードしてしまい、ボブと恋人と子供たちは、巨大な陰謀の渦に巻き込まれていく・・・。

配給:ショウゲート
2010年/アメリカ/92分/カラー/ビスタサイズ/SRD・SDDS ・DTS

公式サイト http://www.w-mission.jp/

作品解説には「集大成」と書かれているが、はたしてこれまで何度の集大成作品があったのだろう。でも本編の冒頭でジャッキー・チェン演じるCIA諜報員ボブのこれまでの活躍をダイジェスト映像で見せるのだが、ここで使用されている映像が過去のジャッキー・チェン出演作品からの抜粋になっているあたり、やはりハリウッド進出30周年を意識しており「集大成」という位置づけになるのだろうか。監督は『ジングル・オール・ザ・ウェイ』や『ベートーベン』『フリントストーン/モダン石器時代』のブライアン・レヴァント。コメディ色の強い監督だが、グレコリー・ポイリアーによるオリジナル脚本も90年代ファミリー・コメディのテイストが強いので、上手く作用している様子。そんなドラマ部分のコメディ要素は、ジャッキーが現場で即興演出してゆくアクションシーンにも自然に取り込まれていて、全体としてのまとまりがよい。
ただちょっと「やりすぎ感」が出てしまっているのが、CIA諜報部に関する描写。『007シリーズ』を数段チャチにしたようなトンドモ描写とチープさがくだらなすぎて、物語から浮いてしまっているように感じる。ま、その浮き具合が笑えるんですけどね。リアル指向になってしまった現在の『007シリーズ』に少々寂しさを感じている方には、本作品に登場する仕掛け満載の小道具や「世界征服を企む悪役」を絵に描いて額に入れて飾ったような敵キャラの描写、そして場面展開ごとに転調して説明に徹する大げさな音楽など、まさにチープな『007』感を楽しめます。
やはりジャッキー・チェン映画というとコメディ・アクションという印象があり、シリアス物のほうが圧倒的に少ないと思える。そういった意味でも本作品はまさしくジャッキー・チェン映画であり、そんな「ジャッキー・チェン映画」がすでに一つのジャンルなんだと改めて認識した。私は個人的には楽しめたし、観終わった後にどうしても顔がニヤけてしまうような映画は久し振りだったのだが、はてさて生粋のジャッキー・ファンが本作品をどう観るのかとても気になります。

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