『アイアンマン2』

前作の大ヒットを受けて製作された第二作。前作ほどの高揚感を期待するとすこし肩すかしな物語ではありますが、プログラム・ピクチャーとして存分に楽しむことができる作品にはなっている。


6月11日 公開
原題「IRON MAN 2」
監督:ジョン・ファヴロー
出演:ロバート・ダウニーJr./グウィネス・パルトロウ/ドン・チードル/スカーレット・ヨハンソン/ミッキー・ローク/サム・ロックウェル/サミュエル・L・ジャクソン

【ストーリー】
今、トニー・スタークに次なる試練が待ち構えていた! 勝手なヒーロー行為を問題視されたトニーは、国からパワードスーツ没収を命じられる。そのニュースを憎悪の目で見つめる男“ウィップラッシュ”は、一撃で金属を真っ二つにする武器(“エレクトリック・デス・ウィップ”)を身に付け、モナコGPに出場したトニーの前に現れた。一方、レザースーツに身を包んだ謎の美女“ブラック・ウィドーも出現。更に、ライバルの武器商人ジャスティン・ハマー率いる謎の軍団も機会を待ち構えていた。そんな中トニーは、パワードスーツのエネルギー源である胸に埋め込んだリアクターの悪影響を徐々に身体に受け、苦しみ始める・・・。鋼のパワードスーツに身を包んだアイアンマン絶体絶命!! 本当の戦いはこれから始まるー。

配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
2010年/アメリカ/124分/シネマスコープ/DTS・SRD・SDDS・SR
Iron Man 2, the Movie: (C) 2010 MVL Film Finance LLC. Iron Man, the Character: TM & (C) 2010 Marvel Entertainment, LLC & subs. All Rights Reserved.

公式サイト http://www.ironman2.jp/

巨大軍需産業の二代目CEOトニー・スタークが自社製品悪用の現場に遭遇したことで改心して、わずかばかりの正義感を奮い立たせて自らアイアンマンとなってゆく姿を描いた前作。その行為がたとえナルシストの自己満足であったとしても、主演にロバート・ダウニーJr.を配することでトニー・スタークの奮闘する姿に人間味を与え、おそらくは若い観客よりも少し年齢が上の観客たちを中心に多くの共感と熱狂を生むことに成功していた。で今回のパート2ではアイアンマンとなってその正体も明かしたトニー・スタークの苦悩とさらなる成長を描くことになるわけだが、武器商人のボスからヒーローへと変貌を遂げた前作に比べれば、本作品での彼の成長の「のびしろ」には限界がある。主人公が一人で内なる葛藤に苦悩してもエンターテイメント作品にはならないため、当然、主人公の葛藤を具現化する敵キャラクターが必要になる。それが本作品ではミッキー・ローク演じるウィップラッシュとなるのだが、その大役を任せるには少しキャラクター設定が弱く感じてしまう。企画当初は武器製造を辞めたスターク社の後釜を狙うジャスティン・ハマーの役柄もウィップラッシュが兼ねていたようだが、物語が複雑になるためキャラクターを二つに分けたとのこと。結果トニー・スタークを追い込む脅威としては力不足となり、物語も散漫になっている。けれどもウィップラッシュを敵キャラとして突き詰めてゆくと『ダークナイト』になってしまうことも明白で、それだけでかなりヘビーな物語を展開させなくてはならくなってしまう。あくまで「アイアンマン=トニー・スターク」の物語にするのであれば、本作品くらいのスタンスがちょうど良いのかもしれない。それでも正直少し物足りなくはあるけれど。
前作で観客に熱狂を与えたもう一つの要素は、アーマースーツというガジェットにあることも明らかだ。トニー・スタークが改良に改良を重ねてアーマースーツが完成されてゆく過程と、着脱時の稼働ギミックにワクワクした諸氏がどれだけいたことだろう。こういったガジェットのスケールアップは続編ならではの楽しみでもある。冒頭で着ているマーク4をスターク・エクスポのオープニングセレモニー壇上で脱ぐシーンや、モナコグランプリ会場で登場するマーク5を装着するシーンなどのメカ感は、やはりそれだけでテンションが上がる。
また、スカーレット・ヨハンソンのアクション初挑戦も本作品の話題の一つになっている。物語上ではあまり必要性を感じさせない役柄だが、マーヴェルが今後展開させてゆく予定の「The Avengers」のために本作品にブラック・ウィドーを登場させておく必要があったとのこと。そんな役柄でも演じているのはスカーレット・ヨハンソンなので充分に魅力的になっている。総じて出演者たちが楽しそうに役を演じており、アンサンブルの小気味よさが観ていて気持ちよい。
全体的には娯楽作品として何も考えずに楽しめる作品になっています。けれど前述したようにドラマ部分は「とってつけた」感が強く、非情に希薄で表層的な物語になってしまっている印象が拭えませんが、アメコミ映画の続編としてはこれくらいの軽さがよいのかもしれません。パート3の製作も予定されれているようですし、今後の展開を少しだけ期待しながら待ちたいと思います。

アイアンマン2 [Blu-ray]

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