『鉄男 THE BULLET MAN』

続編でもリメイクでもない、塚本晋也による『鉄男』シリーズ最新作。『鉄男II/BODY HAMMER』以後、何度も企画として浮き沈みがあったアメリカ版『鉄男』。本作品はその延長として製作され、結果として日本映画となっているが、世界公開を前提としているため東京を舞台にしながらも主人公をアメリカ人男性に設定して全編英語で製作している。


5月22日 公開
監督:塚本晋也
出演:エリック・ボシック/桃生亜希子/中村優子/ステファン・サラザン/塚本晋也

【ストーリー】
東京。外資系企業で働くアメリカ人男性のアンソニーが、日本人の妻ゆり子、3歳の息子トムと送っていた幸せな生活は、ある日突然一変する。最愛の息子が、謎の男に殺された。なぜ殺されたのか? 絶望の中、その理由を追う内に、アンソニーは解剖学者だった父ライドが関与していたある計画“鉄男プロジェクト”へたどり着く。そして、明らかにされていく家族の真実。「決して怒りを持ってはならない」という父の教えを破り、怒りに我を失ったアンソニーの体から、蒸気と黒いオイルが噴出し、筋肉は“鋼鉄の銃器”へと変貌する。
息子を殺した男の狙いは? アンソニーの体に隠された過去とは? 両親が関わっていた“鉄男プロジェクト”の真実とは? あらゆる“謎”が交錯するとき、都市・東京を飲み込む巨大なエネルギーの噴射が始まる。鋼鉄と化したアンソニーの心を溶かすのは、愛か、憎しみか−。

配給:アスミック・エース
2009年/日本/71分/カラー/ヨーロピアン・ビスタ/ドルビーデジタル
(C)TETSUO GROUP 2009

公式サイト http://tetsuo-project.jp/

前2作同様に完全自主制作スタイルで撮影されているため、『鉄男』ファンであれば文句なく楽しめる作品となっている。あの拷問のような爆音と、ファーストカットから頂点の達したままラストまで落ちることのないテンションは本作品でも健在。特に音楽とノイズと効果音で一緒くたになった爆音は、劇場全体を重低音で振動させて観客の思考を停止させる。そうして一気に『鉄男』ワールドへ引きずり込まれたまま、途中下車禁止のジェットコースターはラストまで爆走し続ける。
もちろん監督の塚本晋也の頭の中には『鉄男』シリーズで一貫した思想や本作品でテーマとするモノもあるだろう。けれど誤解を恐れずに言えば、本シリーズの醍醐味は体感することにある。鑑賞するのでもなく、分析するのでもなく、爆音の中で脳味噌を麻痺させて全身で体感するべき作品である。それはテーマパークのアトラクションにも似ている。
壁や床が振動するほどの大音量で鑑賞できる環境を個人で所有している人なんてほんのわずかだろう。ヘッドフォンで鑑賞しても床から椅子に伝わる重低音を感じることはできない。やはりこの作品は劇場で、耳鳴りがするほどの爆音の中で体感して欲しい。
ただし万人受けする作品でもないので、『鉄男』シリーズを観たことがない人は、先ず前作を観て欲しい。それで好きと感じたならぜひ劇場へ。もしどうしても前作を見ることができずに劇場で初めて観る場合は、途中退場しても周囲の人に迷惑にならない座席を選ぶことをオススメします。

鉄男 THE BULLET MAN 【パーフェクト・エディション Blu-ray】

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