『17歳の肖像』

主演のキャリー・マリガンが多数の女優賞を受賞・ノミネートしている佳作。英国ジャーナリスト、リン・バーバーによる回顧録を基にベストセラー作家ニック・ホーンビィが脚本を執筆したとのこと。私は2人とも知らなかったが、ニック・ホーンビィの小説は『ハイ・フィデリティ』や『アバウト・ア・ボーイ』『2番目のキス』など幾つも映画化されていて、有名な作家らしい。


4月17日 公開
原題「AN EDUCATION」
監督:ロネ・シェルフィグ
出演:ピーター・サースガード/キャリー・マリガン/アルフレッド・モリーナ/ドミニク・クーパー/ロザムンド・パイク/オリヴィア・ウィリアムズ/エマ・トンプソン

【ストーリー】
1961年、ロンドン郊外。16歳のジェニーはオックスフォード大学を目指す優等生。ある雨の日、彼女は、倍も年の離れた魅力的な大人の男性と出会い恋に落ちる。そして、今までの勉強ばかりの日々からは想像もできなかったような、刺激的な大人の世界を体験してゆくー。

配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2009年/イギリス/100分/シネマスコープ/ドルビーデジタル、ドルビーSR/PG-12

公式サイト http://www.17-sai.jp/

物語の大筋は、昔から文学や映画の題材として頻繁に取り上げられることの多い、年上男性によるエスコートで世界が広がってゆく少女の成長物語。主演のキャリー・マリガンの演技は確かに新鮮だし、ところどころにユーモアを交えながら丁寧に少女の物語を紡いでいく脚本や演出も良い。けれど何と言っても、アルフレッド・モリーナが良い。この人は本当に上手い役者だなと、出演作を観るたびに思う。また、その他にもエマ・トンプソンら名優たちの助演も印象的だ。そんな、観てしまえば充分に楽しむことができる作品ではある。
けれど、よくある主題であるがゆえに物語として特筆すべき真新しさに欠けてしまっている。1960年代初頭のまだ保守的なロンドンを舞台にしたことも大きな要因だろう。当然のことではあるが、新たに開かれた大人の世界が魅力的なことばかりではないことを、少女はイヤでも知ってしまうことになる。そうして傷つき進路を絶たれた少女は、もう一度、地に足の着く場所から自信の未来を拓こうと立ち戻る。そんな少女の姿を、この時代を選んで描いたことで物語が普遍性を獲得したことも確かだが。