『マイレージ、マイライフ』

とても良質なコメディ映画。いろいろなところで言われていることだが、二昔前のハリウッドが持っていた「映画的魅力」にあふれた作品。


3月20日 公開
原題「UP IN THE AIR
監督:ジェイソン・ライトマン
出演:ジョージ・クルーニー/ヴェラ・ファーミガ/アナ・ケンドリック/ジェイソン・ベイトマン/エイミー・モートン/メラニー・リンスキー

【ストーリー】
年間出張322日、企業のリストラ対象者に解雇を通告するプロフェッショナル、いわゆる“リストラ宣告人”−ライアン・ビンガム。全米中を飛び回りながら二度と会わない相手に人生のやり直しを淡々と告げる彼の口から出る言葉は、あくまでリストラによるトラブル回避のテクニック。そんなライアンに、予期せぬ出会いが訪れる。1人目は、彼と似た境遇のキャリアウーマン。2人目は、会社から期待された女性新入社員。彼女はネット上で解雇通告を行い、出張を廃止するという合理化を提案。自分の立場と目標を危うくする存在だ。さらに、これまで避けてきた家族との“つながり”を試される大問題が発生。そこには、人生で初めて、“今までの自分”と“これからの自分”の距離を感じ始めるライアンがいた・・・。

配給:パラマウント・ピクチャーズ
2009年/アメリカ/109分/ビスタサイズ/DTS・SRD・SDDS・SR

公式サイト http://www.mile-life.jp/

価値観の違う男女が洗練された会話を重ねて喧嘩しながらも次第に惹かれ合ってゆくラブコメに、社会風刺などを巧みに織り交ぜた、1930年代からはじまる、いわゆるスクリューボール・コメディと呼ばれる映画たちと、1980年代くらいまで続くその系譜の映画たち。監督のジェイソン・ライトマンは、そんな良質ハリウッド映画の遺伝子を確実に受け継いだ映画作家と言えるだろう。
演出、脚本、芝居、映像、編集、音楽。いずれもコレといった問題点が思い浮かばない。きっとツッコミどころはあるのだろうが、観ていてとにかく面白い、そんな作品。
主演のジョージ・クルーニーは、実は個人的にあまり好きな役者ではなかった。とても上手い役者だとは思っていたし、好きな作品だって幾つもある。でもどこか好きになれなかったのだ。けれど本作品のジョージ・クルーニーの芝居には素直に引き込まれてしまった。とても「普通の人間」だったと言っても良いかもしれない。全ての出演作を観ているわけではないが、『ER』で注目されて以降、当時のセックスシンボルとされ、どちらかと言えばキャラクターにあまり背景のない役柄が多かったように思える。しかし本作品でクルーニーが演じる主人公ライアン・ビンガムには生まれ育った街があり、姉妹がいて、生活のために仕事をしている。そんな「普通の人間」役が新鮮だったのかもしれない。
蛇足になるが、『マイレージ、マイライフ』という邦題が良い。どこにでもありそうなタイトルだが、本作品を上手く表現した秀逸なタイトルだと思う。原題であり原作小説のタイトルでもある『UP IN THE AIR』より断然良い。
あえて結末に明解な回答を用意しなかったと言われている本作品。そんなエンディングを消化不良に感じる人もいるだろうが、ハッピーもアンハッピーもごちゃ混ぜになった物語というのも面白いと思う。

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