『ハート・ロッカー』

キャスリン・ビグロー監督最新作。久し振りに名前を聞くなと思っていたら、7年ぶりの新作らしい。2004年のイラクを舞台にした爆発物処理班の物語。だから戦争映画ではなく戦場映画。


3月6日 公開
原題「THE HURT LOCKER」
監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジェレミー・レナー/アンソニー・マッキー/ブライアン・ジェラティ/ガイ・ピアース/レイフ・ファインズ/デヴィッド・モース/エヴァンジェリン・リリー/クリスチャン・カマルゴ

【ストーリー】
2004年夏のイラク。爆発物処理の仕事に従事する米陸軍のブラボー中隊に、ジェームズ二等軍曹という新たなリーダーが赴任してくる。この危険極まりない任務を遂行するには、爆弾の解除を実行する班長とサポート役の兵士とのチームワークが必要不可欠だが、ジェームズはことごとく作業上のルールを無視し、部下のサンボーン軍曹とエルドリッジ技術兵を恐怖と不安のどん底に陥れていく。時に激しく対立しながらも力を合わせ、次々と過酷なミッションを切り抜けていくブラボー中隊の3人。しかし戦場の理不尽な現実は彼らに容赦なく牙を剥き、想像を絶する試練を突きつけてくるのだった…。

配給:ブロードメディア・スタジオ
2008年/アメリカ/131分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/PG12
(C)2008 HURT LOCKER, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

公式サイト http://www.hurtlocker.jp/

主演の3人が良い。「いつ誰が死ぬか分からない」というリアリティを求めて有名スターを起用しなかったという。3人ともいわゆる若手実力派俳優らしいが、出演作品名を見てもどの役なのか私には分かりませんでした。
終始、複数台の手持ちカメラで撮影し、まるでドキュメンタリー映画のように単調とも言えるテンポで進む物語だが、要所ごとに任務中の緊張に満ちたシーンが挿入される。この手の映画は観客にある程度の体力を要求するし、観方によっては途中で飽きてしまうだろうが、物語のクライマックスから終盤へ向けての展開には胸が痛くなる。
チラシに掲載されている「素晴らしい映画としか言いようがない。」というワシントン・ポスト紙評が、色々な意味を含めて全てなのだと思う。正直、娯楽映画以外の戦争映画というジャンルは批判しづらい。戦争映画の多くは、戦争という大儀と兵士個々のアイデンティティの確立と崩壊を描いた物語がほとんどである。それは平和な日常に暮らす我々には計り知れない世界であるが、かと言って「知らぬ世界」と簡単に捨てることも倫理が許さない「人の業の世界」。結局、受け入れるしかない。
脚本を書いたマーク・ボールは「戦争は、ある面では魅力的な存在」「今日、制服を着ている兵士は皆、制服を着たかった者たちなのだ」と言う。この作品がこれまでの多くの戦争映画の名作と違って見えるのは、現在の米軍兵士の全てが志願兵だという現実ゆえだろうか。それとも、戦場で発見された爆弾の解体処理をするという、戦場においてわずかでも前向きな任務に就く者たちの物語であるためか。
もう一度観たい映画だが、心と身体の調子に相談してからでないと観られない。

ハート・ロッカー [Blu-ray]

ハート・ロッカー [Blu-ray]