『すべて彼女のために』

『クラッシュ』のポール・ハギスによるリメイクが決定しているフランス映画。観ごたえのある映画でした。監督は本作品が初長篇となるフレッド・カヴァイエ。今後の活動に注目です。


2月27日 公開
原題「POUR ELLE」
監督:フレッド・カヴァイエ
出演:ヴァンサン・ランドン/ダイアン・クルーガー/ランスロ・ロッシュ/オリヴィエ・マルシャル/アムー・グライア/リリアン・ロヴェール/オリヴィエ・ペリエ

【ストーリー】
フランス、パリ。国語教師であるジュリアン(ヴァンサン・ランドン)と出版社に勤めるリザ(ダイアン・クルーガー)は一人息子のオスカルともに平凡ながらも幸せな夫婦生活を送っていた。しかし、ある朝、彼らの人生が一変してしまう。警察が突如として家に押し入り、リザが殺人容疑で逮捕され、投獄される。やがて三年の時が経ち、リザに二十年の禁固刑が宣告されてしまう。無実の罪を必死に主張するリザであったが、状況証拠などから、誰もが彼女の罪を確信していた。夫・ジュリアンを除いてはー。彼女の人生に残されたのは絶望だけだった。次第に衰弱し、精神も不安定になっていくリザ。一方で、ジュリアンはあきらめなかった。悩んだ末に、彼がとった行動とは?リザはその時。

配給:ブロードメディア・スタジオ
2008年/フランス/96分/カラー/DTS、ドルビーSR
(C)2008 FIDÉLITÉ FILMS-WILD BUNCH-TF1 FILMS PRODUCTION-JERICO

公式サイト http://www.subete-kanojo.jp/

いろいろと書きたいことはあるけれど、中盤以降のストーリーが公式データには記載されていないため、おそらくあまり書いてはいけないのではないかと思われる。
個人的にはかなり好きなテイストの作品。冒頭、暗転にクレジットだけの画面に音声だけが先行して聞こえた後、車に乗り込んだ主人公ジュリアンのアップを後部座席から捉えた映像がカットインされる。けれどこの冒頭シーンは物語の後半に繋がっており、車が発車した後、物語はリザの逮捕前夜までさかのぼる。人物のカットインで始めるやり方は、唐突に物語世界へ放り込まれるようで好きだ。
主演の2人ヴァンサン・ランドンとダイアン・クルーガーが良い。気丈で上司にも臆することなく意見をぶつけるリザは、有罪判決により人生に絶望し肉体的にも精神的にも衰弱していく。反して、平凡な国語教師であるジュリアンは冤罪で投獄されたリザを救うため、人生の全てをかけて行動を起こす。そんな2人の対照的な状況の推移を、それぞれが丁寧に演じている。
物語の終盤からエンディングにかけての展開には、観る人によって意見が分かれると思われる。作品としては「正解」な結末であろう。けれど悲劇好きな私としては、ジュリアンが選択した行動が志半ばで挫折した方が好きだったと思う。もちろん、本作品がパッピーエンドかと言われると、それも疑問だが。