『サベイランス』

デヴィッド・リンチの娘であるジェニファー・リンチ監督作品。 前作『ボクシング・ヘレナ』以来14年ぶりの新作とのこと。 前作もずいぶんと偏った作品だったように記憶しているがあまり覚えていない。そして本作品も決して「まっとう」な作品とは言えないだろう。


2月6日 公開
原題「SURVEILLANCE」
監督:ジェニファー・チェンバース・リンチ
出演:ジュリア・オーモンド/ビル・プルマン/ベル・ジェイムズ/ライアン・シンプキンズ/フレンチ・スチュワート

【ストーリー】
サンタ・フェの田舎町で起こっている凶悪な連続殺人事件。捜査に乗り出したFBI捜査官エリザベスとサムは、地方警察で保護されている殺人現場に居合わせた3人の目撃者に事情聴取を開始する。同僚を目の前で殺され、自らも傷を負った警察官ジャック、彼氏を殺されたコカイン中毒のボビー、そして家族を目の前で惨殺された8歳の少女ステファニー。ビデオカメラで監視されながら進められる取り調べでは、3人の証言が微妙に食い違い、二転三転を繰り返す。極限の恐怖を体験した3人、誰が何のために嘘をついているのか? 不可解な惨殺事件はさらに謎が深まっていく。そして、取り調べが進むにつれ、殺人事件の全貌が見えてきたとき、全く予想もしなかった犯人像が浮かび上がってくるのだった・・・。

配給:ファインフィルムズ
2007年/カナダ/98分/カラー/35mm/シネマスコープ/ドルビーデジタル
(C)2007 SEE FILM INC. All Rights Reserved.

公式サイト http://www.finefilms.co.jp/surveillance/

作品の着想が 黒澤明の『羅生門』における 証言の食い違いとのことだが、本作品での証言はその殆どが保身のための嘘であり、それも事件に至るまでの日常的行動に関する嘘であるため、事件そのものにはあまり関係がない。『羅生門』的な面白さなど一片もないし、わざわざ黒澤明の名前を出すほどのこともない。むしろ逆効果なのではないかとさえ思える。

そしてそれ以上に、本作品の登場人物たち、特にパトロール中の警官による 快楽のための暴力と身勝手さに腹立たしさを覚える。もちろん彼らの人物設定があればこその作品でもあるのだけれど。

そもそも「悪意ある暴力」描写にある種のカタルシスを感じることができるのは10代の子供たちと、ごく一部のオトナたちだけだと勝手に思っている。暴力描写を凌ぐようなサスペンスフルな物語展開があるわけでもなく、正直、年齢を重ねた私には拒絶感しか残らなかった。

作品には直接関係ないが、私が観た時はビデオ上映だったため、フォーカスもボケていて暗部も潰れていた。硬く冷たい映像の雰囲気だけは比較的好きな感じだったのでちょっと残念。本来はフィルム撮影らしいので、劇場公開時はフィルム上映になるだろうけれど、もう一回観ようとは思わない。

サベイランス [DVD]

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