『かいじゅうたちのいるところ』

異作『マルコヴィッチの穴』のスパイク・ジョーンズ監督最新作。
原作はモーリス・センダックによる同名の世界的ベストセラー絵本。

この作品にはやられました。 子供向けファンタジーなだけの映画ではないだろうとは思っていましたが、 まさかこれほど深い物語になっているとは。


1月15日 公開
原題「WHERE THE WILD THINGS ARE」
監督:スパイク・ジョーンズ
出演:マックス・レコーズ/キャサリン・キーナー/マーク・ラファロ/ローレン・アンブローズ/クリス・クーパー/ジェイムズ・ガンドルフィーニ/キャサリン・オハラ/フォレスト・ウィテカー/ポール・ダノ

【ストーリー】
やんちゃだけど感受性豊かな男の子マックスは、家族に分かってもらえない寂しさを抱え、いつの間にか違う世界へ抜け出す。彼がたどり着いた島で出会うのは、謎がいっぱいで不思議なかいじゅうたち。彼らの感情は、そのワイルドで予測のつかない行動と同じで、とても激しく、意外なものばかり。
かいじゅうたちは長い間、自分たちを導いてくれるリーダーが欲しくてたまらなかった。そしてマックスは支配できる王国が欲しかった。そんなわけで王になったマックスは、誰もが幸せになれる場所を創ると約束する。
しかし、マックスはすぐに気づく。王国を支配することはそんなに簡単ではなく、かいじゅうたちとの関係も、最初に思ったよりもずっと複雑だということを。

配給:ワーナー・ブラザース映画
2009年/アメリカ/101分/シネマスコープ/SRD・DTS・SDDS
(C)2009 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/wherethewildthingsare/

原作絵本では、 主人公マックスが部屋の中で空想する物語であり、 かいじゅうたちには一言しかセリフはない、 完全一人称な物語。 けれど本作品では、 かいじゅうたちのキャラクターを膨らませ、しゃべらせることで、 物語世界がグンと広がりを見せている。 絵本も大好きだったが、 そこからこれだけの世界を構築させたスパイク・ジョーンズは、 やはりタダモノではないと再認識されられる。

自身を王だと名乗り「何でも解決できる」と語るマックスに、 かいじゅうたちのリーダーであるキャロルは 「孤独も何とかできるかな」 と問いかける。
「いきなり何てことを聞くんだ」と、 もうこの時点で私は椅子からずり落ちそうになりました。

マックスが現実世界で抱えている、 家族を中心とした人間関係は、 そのまま微妙に立場を変えながら、 かいじゅう世界でも繰り返され、 さらに複雑な問題へと発展していく。 その中でマックスは王として決断し挫折しながら、 世界と関わっていくことになる。

作品全体を通して、 登場人物たちの感情が必要以上に饒舌に説明されることはなく、 観る側が深読みすればするほど
様々な感情が浮き上がってくる、 物語の組み上げ方が秀逸。

単純にエンタテインメントとして、 現実と地続きではない物語を観たいのであれば、 オススメしない。 それだけ、 この作品で描かれる感情は、 孤独と愛情と(色々な意味で)自己欲に満ちていて、 観客の胸を締め付ける。

私にとっては、 これから先、コトある毎に何度も何度も観たくなるであろう作品となった。
また、各パートに流れる音楽も印象的で、鑑賞後にはサントラCDが欲しくなる。

かいじゅうたちのいるところ [Blu-ray]

かいじゅうたちのいるところ [Blu-ray]