『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』

スウェーデン製ミステリー小説の映画化第一弾。
世界的ベストセラーらしいが、私は知りませんでした。けれど、チラシに掲載されていた原作本の装丁を見たら、電車の中吊り広告で執拗に宣伝されていた本であることを思い出した。基本、海外ミステリー小説に興味がないので、どうでも良いのです。


1月16日 公開
原題「MILLENNIUM THE GIRL WITH THE DRAGON TATOO」
監督:ニールス・アルデン・オプレヴ
出演:ノオミ・ラパス/マイケル・ニクヴィスト/スヴェン・バーティル・トープ/ステファン・サウク

【ストーリー】
40年前、スウェーデンの孤島で忽然と姿を消したひとりの少女。彼女の血縁である大企業ヴァンゲル・グループの重鎮が捜索を依頼したのは、名誉毀損で有罪判決を受けた敏腕ジャーナリスト、ミカエルだった。彼は、背中にドラゴンのタトゥーを入れた女性調査員リスベットの協力を得て、失踪事件の裏に潜む忌まわしい真実を暴き出していく。

配給:ギャガ
2009年/スウェーデン/153分/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル
(C)Yellow Bird Millennium Rights AB, Nordisk Film, Sveriges Television AB, Film I Vast 2009

公式サイト http://millennium.gaga.ne.jp/

原作者のスティーグ・ラーソンは、構想5部作のうち3作まで書いて出版社へ持ち込み、第1巻の発売直前に急逝したそうです。その後刊行された3作とも映画化されており、すでに本国スウェーデンでは2009年中に連続公開済み。2010年2月からはテレビドラマが放送されるらしい。ちょっとした国民的お祭りのようです。

映画としては、何の変哲もない、ごく普通のミステリー映画でした。鑑賞後に深い想いが残るわけでもなく、登場人物に思い入れができたわけでもない。強いて言えば、現代スウェーデン映画を観る機会がほとんどないという希少性くらい。でもそんなことは作品自体には全く関係ないし、コレが現代スウェーデン映画だ、と言われても微妙である。

物語を取り巻くそれぞれの設定などはきちんとそろえられているのだが、結局のところ、描き方の全てが中途半端で、総じて軽く乾いていることに問題があるのだと思う。

ここからはネタバレになる可能性があるのだが、

本土から橋一本で繋がった島に大企業の実業家一族が住んでおり、40年前に起きた親族失踪事件の調査を依頼された主人公の物語。要は「お家騒動」なのである。そこに大戦時のナチス思想などが絡んでくる。国が違えば、金田一さんが登場しそうな物語。北欧と日本で通じる何かがあるのだろうか、もしくは共有している他国文化があるのかもしれない。

本来この手の物語、つまり世代をまたぐ旧家のお家騒動には、ある程度以上の物理的もしくは血縁上の閉塞感と、登場人物の感情に湿っぽさが必須だと思う。が、この作品には設定としてわずかに描かれているだけで、その閉塞感が登場人物や物語の空気を重く支配することもなければ、調査を依頼した前会長の愛情と哀しみも伝わってこない。それどころか、安易でハリウッド的なスキャンダラスさで装飾しただけの物語にも思えてしまう。けれどハリウッド映画の場合は、「思いもよらなかった他者による怨念のトバッチリ」といった結末になって、あまり「お家騒動」にはならない。アメリカではその歴史の浅さと多民族のため「お家騒動」という構図が成立しづらいのかもしれないが。

シリーズ1作目であるため、孤島で起きた失踪事件と一族二世代の物語より、主人公2人の出会いの物語としての比重が大きかったのだろうか。それとも、この軽さや乾きがスウェーデン新世代なのだろうか。できれば前者であり、前述した国民的お祭りの副産物であって欲しいと思う。

ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 [DVD]

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