『ペルセポリス』

 読み聞かせの絵本を観ているような作品。
 モノクロ(一部カラー)のディフォルメされた簡素な絵の雰囲気とは別に、物語はさまざまな映画的手法によりスピーディな展開をみせる。1970年代末のイスラム革命から1980年代のイラン・イラク戦争まで、激動のイランを舞台にするには、95分はあまりに短い。だが、主人公のモノローグでトントン拍子に進められていく物語のスピードは、そういった周辺事情を(良い意味で)忘れさせ、家族への愛情と、やや自虐的なユーモアを加味して、主人公の「生きていく」姿を描いていく。
 改めて、時代や国家や思想と心中しないで生きていけるのは女であり、いつの時代でも男は刹那的で自ら破滅していくのだなぁ、と感じる作品でもあった。


12月22日 公開
原題「PERSEPOLIS」
監督・脚本:マルジャン・サトラピ/ヴァンサン・パロノー
声の出演:キアラ・マストロヤンニ/カトリーヌ・ドヌーヴ/ダニエル・ダリュー/サイモン・アブカリアン/ガブリエル・ロペス/フランソワ・ジェローム
原作(グラフィック・ノベル):マルジャン・サトラピ

【ストーリー】
 フランス、オルリー空港。私はヴェールを被り、掲示板を見上げる。“テヘラン行き 846便”―祖国イランに想いを馳せ、懐かしい日々を回想しはじめる。
 1978年。9歳のマルジャン(通称マルジ)は、ブルース・リーが大好きな元気いっぱいの女の子。パパとママ、おばあちゃんに愛され、ごく普通の女の子として何不自由なく暮していた。そんなある日、「国王(シャー)を倒せ!」と叫ぶ人で街が溢れかえる。この時初めてマルジは、おじいちゃんが昔カジャール朝の王家の血を引く王子であり、共産主義者だったことを知る…。

配給:ロングライド
2007年/フランス/1時間35分/モノクロ(一部カラー)/ビスタサイズ/ドルビーSRD
(C)2007. 247 Films, France 3 Cinema. All rights reserved.

ペルセポリス [DVD]

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