『桐島、部活やめるってよ』

吉田大八監督の四作目。これまでの作品も好きだったけれど今作は別格となった。浅井リョウの同名小説の構成を大幅に改編した脚本が見事。それ以上に演出が素晴らしく、監督の要求に十二分に応えたであろう若き役者たちにも最大の賛辞をお送りたい。
物語の中心人物たる“桐島”の不在に困惑し迷走する学校世界で、桐島と交流ある生徒たちの間では日ごとに不安と緊張が高まり、それ以外の桐島と交流のない生徒たちにまで少なからず影響を及ぼしてゆく。そんな幾重にも重なりすれ違う個々の物語がセリフだけでなく各々の目線やちょっとした仕草にて語られ、それぞれの想いがクライマックスの一点へ集結してゆく様に“映画的”カタルシスを覚える。そして“祭り”の後に訪れる、ある二人のシーンと彼の決意に感動する。
台風クラブ』『櫻の園』『ショートカッツ』など連想する作品を多くあるが、それら内外の過去の傑作と並ぶ作品だと思うし、これから何度か見返すことになるであろう作品となった。
【追記】
ちなみにこの作品は、いわゆる“テレビ局映画”として製作されている。監督や外部製作会社の作家的発案ではなく、原作を読んだ日本テレビ映画事業部の新人プロデューサーの企画書から始まっている。日頃なにかと敬遠しがちな“テレビ局映画”に、こんなかたちで感銘を受けることになるとは!と襟を正したのでした。


8月11日 公開(公開中)
監督:吉田大八
出演:神木隆之介/橋本愛/東出昌大/大後寿々花/前野朋哉/清水くるみ/山本美月/松岡茉優/藤井武美
原作:「桐島、部活やめるってよ」(集英社 刊) 浅井リョウ 脚本:喜安浩平/吉田大八 音楽:近藤達郎 撮影:近藤達人

【ストーリー】
ありふれた時間が校舎に流れる「金曜日」の放課後。1つだけ昨日まで違ったのは、学校内の誰もが認める“スター”桐島の退部のニュースが構内を駆け巡ったこと。彼女さえも連絡が取れずその理由を知らされぬまま、退部に大きな影響を受けるバレーボール部の部員たちはもちろんのこと、桐島と同様に学校内のヒエラルキーの“上”に属する生徒たち、そして直接的には桐島と関係のない“下”に属する生徒まで、あらゆる部活、クラスの人間関係が静かに変化していく。校内の人間関係に緊張感が張りつめる中、桐島に一番遠い存在だった“下”に属する映画部前田が動きだし、物語は思わぬ方向へ展開していく。

配給:ショウゲート
2012年/日本/103分
©2012「桐島」映画部

公式サイト http://kirishima-movie.com/index.html

ミニパラ http://www.minipara.com/movies2012-3rd/kirishima/

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