東京国際映画祭『チキンとプラム』

東京国際映画祭 WORLD CINEMA部門)

ペルセポリス』のマルジャン・サトラピとヴァンサン・パロノー監督による最新作。今回は前作のようなアニメーションではなく、ほぼ実写作品で一部にアニメーションを導入している。それでもリアル指向とは程遠く、全編がファンタジー色であふれている。
ヴァイオリニストの主人公が自身の愛器を失い新たなヴァイオリンを探して回るが見つからず、途方に暮れてベッドに寝たまま死を待つ8日間と、その間に夢想する家族の未来と自身の過去の回想の物語。
物語前半における主人公(妻と二人の子供を持つ)のあまりに身勝手で“こども”な言動に呆れつつも、映像の楽しさに惹かれて観ていた。でも物語が進むにつれ彼の若き日のエピソードが明らかになると、その悲恋に胸を打たれる。けれどもその感動は主人公の想いに対してではなく、若き日に出会った悲恋の女性の決断と、何と言ってもその後に結婚して現在を共にする女性の少し偏った想いに心を打たれるのである。実際この自分勝手でしかない主人公はただ迷惑なだけで、やはり共感の余地はない。
そんな少しひねくれた、大人のためのファンタジーであり、個人的には大好きな作品。今回の上映はTOHOシネマズ六本木ヒルズの7番スクリーンという一番大きなスクリーンで鑑賞した。普段ならとても喜ばしいことだが、全編が趣向に満ちたこの作品には少し大きすぎたようで、作品の全体を堪能しきれなかったように感じた。できれば手頃なサイズのスクリーンでもう一度ゆっくりと作品世界に没入したい。まだ日本配給は決まっていないらしいので、どこかで配給してもらえないかと願っています。
http://2011.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=167

ペルセポリス [DVD]

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